「それは、過去よ」
「過去じゃない。君が否定しても、僕と結婚する未来は変わらないよ」
言葉が、届かない。
理屈も、感情も、すべてが拒絶されている。
聖女の力とは、なぜ癒しと回復しかできないのだろう。
今、この男を攻撃できる力があれば。
迷うことなく、その四肢を引き裂いていただろう。
「殺してやりたい! 私に指一本触れてみなさい。穢らわしい、パトリス・ノイダン」
自分の中にこんな感情が眠っていたのかと、エリシア自身が驚くほどの殺意が湧き上がる。
聖女だからと、すべてを我慢し続けることにも限界があった。
「そんなふうに怒るんだね」
楽しげに、パトリスは笑った。



