醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。

 胸の奥で、何かが静かに、だが確実に折れていく。
 聖女であれば、すべてを受け入れろというのか。

 聖女であれば、人の愚かさを全て受け入れ拒む権利すらないとでもいうのだろうか。

「今日は大事な夜だから、優しくするよ。愛されていると実感すれば、君の心も落ち着くだろう」
 パトリスの声には疑いがなかった。

 本気で、自分のしようとしている行為が正しいと信じている。それが、何よりも恐ろしい。

「やめて。私は、望んでいない」
「どうして? 君はずっと僕の妃になるはずだった。婚約していただろ」
 パトリスは心底、不思議そうな声で尋ねた。

 悪意も、自覚もない。
(自分で婚約を破棄したくせに)