『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

 その日の放課後。私は月夜くんに誘われて、図書室で新しいパズル雑誌を広げていた。


「この問題、すごく綺麗だと思わない? 答えを導き出す瞬間の快感、一ノ瀬さんならわかってくれるよね」


「うん! 本当だ、パズルが解けると頭がスッキリするね」


 月夜くんがふわりと笑って、私の頭に手を伸ばそうとした、その時。


「……何、気安く触ろうとしてんだよ」


 氷点下の声と共に、私の肩が強く引き寄せられた。


 背中に当たるのは、熱くて硬い、春兎の胸板。


「春兎! まだいたの?」


「当たり前だろ。お前が変な奴に捕まってないか、見張ってなきゃいけねーし」


 春兎は私を抱き寄せたまま、月夜くんを殺さんばかりの目で見据える。


 けれど月夜くんは、わざとらしくため息をついて見せた。


「瀬戸くん、怖いなぁ。一ノ瀬さんは『幼馴染』の君より、僕とのパズルの方が楽しいみたいだよ?」


「……っ、てめぇ……!」


 春兎の腕に力がこもる。彼は私の耳元に顔を寄せると、周囲が唖然とするほどの至近距離で囁いた。


「空音。お前、こいつに触られても何とも思わねーの? 俺がこんなにイライラしてんのに、お前は……」


 春兎の手が、私の頬を包み込む。そのまま親指で私の唇をゆっくりとなぞった。


「幼馴染なら、こんなことされても平気なのか? 唇、触られて……このままキスされても、『友達だから』って笑ってられんのかよ」


「えっ……あ……っ」


 春兎の瞳が、至近距離で熱く、暗く沈んでいる。


 月夜くんと一緒にいる時の「安心感」とは全く違う、心臓が痛いくらいに脈打つ、暴力的なまでの「熱」。


「……やだ、春兎。……変な感じする……」


「変じゃねーよ。これが、男に触られてるって感覚だ」


 春兎は月夜くんを見せつけるように、私の首筋に顔を埋めた。


「こいつには絶対させねーし、触らせねー。……空音、いい加減分かれよ。お前を揺さぶれるのは、俺だけだ」


 独占欲を剥き出しにした春兎の熱に当てられて、私の「幼馴染」という言い訳が、音を立てて崩れ始めていた――。