『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

「……空音。お前、いい匂いしすぎ。責任取れよ」
 

 机の下でギュッと手を握られ、耳元で甘い声をかけられる。


 クラス中が「あ、あの二人付き合い始めたんだ」という空気になっているけれど、私の頭の中はパニックだった。


「……ねえ、春兎。さっきから言ってるけど、私、春兎と付き合うなんて一言も言ってないよ?」


「は?」


 春兎の動きがピタッと止まる。


 繋いでいた手に力が入り、彼は信じられないものを見るような目で私を見つめた。


「……お前、昨日『春兎がいなくて胸が痛かった』って言っただろ。あれは『好き』ってことじゃねーのかよ」


「それは、幼馴染としてだよ! 春兎がいないと、一緒にアイス食べる相手も、宿題教えてくれる人もいなくて寂しいでしょ?」


 私が本気でそう答えると、春兎の顔からスーッと血の気が引いていった。
 

横の席でそのやり取りを聞いていた月夜くんが、堪えきれずに「ぶふっ」と吹き出す。


「……あはは! 瀬戸くん、ドンマイ。一ノ瀬さんにとっては、君は『便利な幼馴染』止まりだったみたいだね」


「……黙れ、月夜。殺すぞ」


 春兎は月夜くんを睨みつけたあと、今度は私を壊れそうなほど強い力で引き寄せた。


「……幼馴染? アイス食う相手? ふざけんな、空音。俺はお前をそんな目で一秒も見たことねーよ」


「えっ、でも……」


「いいか。お前がその気になるまで、何百回でも教えてやる。俺はお前を、一人の女として奪いに来てるんだってことを」


 春兎の瞳に、さっきまでの甘さとは違う「本気の狩人」の火が灯る。


「……覚悟しとけよ、空音」


 勘違いから始まった暴走は、今度は「片想いの俺様王子による、本気の陥落作戦」へと姿を変えて――。