『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

 屋上の踊り場。春兎は私を壁に押し付けると、逃がさないように両腕で塞いだ。


 荒い呼吸が、私の前髪を揺らす。


「……空音。お前、本当に何も分かってねーんだな」


「……春兎? 急にどうしたの、怖いよ……」


 私が怯えたように肩を震わせると、春兎は悔しそうに顔を歪めて、私の肩に頭を預けてきた。


「怖くさせてるのは、お前だろ……っ。中一の時、俺がなんでお前を避けて、他の女と付き合ったと思ってんだよ」


 耳元で、春兎の切ない声が響く。


「……小六の最後、お前が隣のクラスの男子と『ずっと一緒にいたいね』って笑ってるの、見ちゃったんだよ。……俺じゃなくてもいいんだって思ったら、


頭が狂いそうだった」


「えっ……あ、あれは、同じ塾に行こうねって話してただけで……!」


「そんなの知らねーよ! 天然なお前に期待して、振られるのが怖くて……っ。


お前を忘れるために無理やり他の女と付き合ったけど、全然ダメだった」


 春兎の腕に、ぎゅっと力がこもる。


「一秒もお前を忘れたことなんてなかった。元カノの話が出るたびにお前が困った顔するのも、本当はざまーみろって思ってた。……少しでも、俺のこと気にしてほしくて」


 春兎が顔を上げると、その瞳は今にも泣きそうに潤んでいて。


 余裕たっぷりの「俺様」なんて嘘。


 そこにいたのは、一年間ずっと私に片想いをしていた、不器用な男の子だった。


「……空音。頼むから、もう俺の知らないところで誰かと笑うな。……俺だけを見てろよ」


 初めて聞く、春兎の弱々しいお願い。


 一年間の空白の正体は、私を想いすぎた春兎の「寂しさ」だったんだ。