『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

お昼休み。春兎が先生に呼び出されて不機嫌そうに席を立つと、ようやく私の周りの空気がふんわりと緩んだ。


(……ふぅ。春兎がいると、空気が熱くて心臓がもたないよ……)


 私が机に突っ伏して深呼吸をしていると、すぐ隣の席から「ねえねえ、一ノ瀬さん」と明るい声がした。


 顔を上げると、隣の席の月夜(つきよ)くんが、キラキラした瞳でこちらを覗き込んでいた。


 どこか掴みどころのない「いたずらっ子」みたいな笑顔を浮かべている。


「これ、見てよ。超難問の謎解きカード。一ノ瀬さんなら、これの答え……何だと思う?」


 月夜くんが差し出してきたのは、手書きの可愛いイラストが描かれたカード。


「えっ、えーと……これは、猫かな?」


「あはは! 惜しい! 正解は『影』でした。一ノ瀬さんの答え、面白いね」


 月夜くんはケラケラと楽しそうに笑う。春兎の強引さとは正反対の、日向ぼっこをしているような心地よさ。


「一ノ瀬さんと話してると、新しい謎解きのヒントが浮かびそう。……ねえ、また明日も一緒に遊んでくれる?」


 月夜くんが私の顔を覗き込み、距離が少しだけ近づいた、その時。


 ガラガラッ!!


 教室のドアが、蹴破らんばかりの音を立てて開いた。


「……何、楽しそうに喋ってんだよ」


 そこには、地獄の底から響くような低い声で呟く春兎が立っていた。


 肩で息をして、額にはうっすらと汗をかいている。

 呼び出しを最短で切り上げて、走って戻ってきたんだ。


 春兎は一瞬で私の隣まで詰め寄ると、月夜くんと私の間に割って入るようにして、ドカッと自分の椅子に座り直した。


「空音。……お前、俺がいない間に何他の男に懐いてんの」


 春兎の大きな手が、机の下で私の膝をぎゅっと掴む。


 対する月夜くんは、ちっとも怖がる様子もなく、「あ、瀬戸くんおかえり。一ノ瀬さん、謎解きの才能あるよ」なんて、

 ニコニコしながら火に油を注いでいる。


「才能?……空音、こいつと何話してたか、全部吐け」


 俺様王子の独占欲が、ついに「癒やし系ライバル」の登場で爆発寸前――。