『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

春兎の爆弾発言で、教室は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


「瀬戸くん、本気なの!?」「あの一ノ瀬さんと幼馴染だったってマジ?」


 あちこちから飛んでくる好奇の視線が痛くて、私は下を向いたまま自分の席に座る。


 私の席は、窓際の前から三番目。


 そして、春兎が強引に椅子を引いて座ったのは――私の斜め後ろ、四番目の席だった。


(……視線が、痛い……っ)


 春兎は椅子に深く腰掛け、長い足を投げ出して、じっと私の背中を見つめている。


 教科書を出そうと少し動くだけで、後ろから「フッ」と鼻で笑う音が聞こえて、心臓が跳ねた。


「……あの、春兎。自分の席、そこじゃないでしょ? 戻らないと先生に怒られちゃうよ」


 私が小声で振り返ると、春兎は頬杖をついたまま、不敵に目を細めた。


「嫌だね。ここならお前のうなじも、困った横顔も、全部見える。……一年間、見たくても見れなかった分、たっぷり補充させてもらうから」


「ほ、補充って……」


 春兎はそのまま、机の下で私の制服の裾をクイッと引いた。


「空音。お前、さっきからあっちの男子のこと見てただろ。……次やったら、放課後お仕置きな」


「見てないよ! 出席簿見てただけだもんっ」


 天然な私の反論なんて、春兎はこれっぽっちも聞いていない。


 斜め後ろからの熱い視線と、時折スカートに触れる彼の指先。


 中二の初日。


 勉強なんて一文字も頭に入ってこないくらい、私は「俺様王子」の視線に囚われてしまった。