『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

(……どうしよう、心臓が壊れそう)


 図書室の壁に追い詰められたまま、私は春兎を見上げることしかできなかった。


 一年前まで、あんなに優しく「空音」って呼んでくれてたのに。


 今の春兎の瞳は、まるで獲物を追い詰めた肉食獣みたいだ。


「……ねえ、春兎。教室、行かなきゃ。もうすぐ始業式が始まっちゃう……」


「ああ、そうだな。……空音は俺の隣じゃなきゃ困るし」


 春兎はフッと不敵に笑うと、私の手首を強引に掴んだ。


 そのまま、戸惑う私を引きずるようにして図書室を出る。


「ちょっと、春兎! 手、離してっ。誰かに見られたら……」


「見られればいいだろ。っていうか、見せつけるためにやってんだけど」


 春兎は止まらない。


 廊下ですれ違う生徒たちが、次々に「えっ、瀬戸くん!?」「隣の女子、誰?」とざわつき始める。


 中一の時に何人もの女の子と付き合っていた、学園一の有名人。


 そんな彼が、地味な私を連れて歩いているんだから、目立たないわけがない。


 教室の前に着くと、春兎は一切ためらうことなくドアをガラリと開けた。
 

 お喋りに夢中だったクラスメイトたちの視線が、一斉にこちらに集まる。


 春兎は繋いだ手をこれ見よがしに高く上げて、教室中に響く声で言い放った。


「今日からこの一ノ瀬空音は、俺のもんだ。……手ぇ出す奴は、俺が潰すから」
 教室中が凍りついたような静寂に包まれる。


 さすがに理解してしまった。


 疎遠だった一年の間に、春兎はとんでもなく「危険な俺様」に進化してしまったんだってことを――。