『お前以外、愛せない』        ――元カノがいたはずの俺様王子くん、私への執着が暴走中!?ーー

 中二の春、始業式。


 新しいクラスの掲示板を見て、私は心臓が止まるかと思った。


(うそ……一緒だ)


 2年3組。私の名前のすぐ隣に、瀬戸 春兎(せと はると)の名前がある。


 春兎は、私の幼馴染。


 小六の夏までは、放課後の図書室で一緒に宿題をして、帰り道に一本のアイスを分け合うような、一番近い存在だった。


 けれど、中一になった途端、私たちは「他人」になった。


 春兎に彼女ができたと聞いたのは、入学してすぐのこと。


 廊下ですれ違っても、彼は一度も私を見ようとしなかった。


(同じクラスなんて、どうしよう。気まずすぎるよ……)


 落ち着かない私は、まだ誰もいない始業式前の図書室へ逃げ込んだ。


 返却棚に本を戻そうとした、その時。


「……っ」


 ふわりと、懐かしい石鹸の香りがした。


 一年前まで、私の隣でいつも漂っていた、大好きな香り。


「おい、空音」


 低くて、少しだけ不機嫌そうな声。


 驚いて振り返ると、そこには棚に背を預けて私を睨みつける、春兎がいた。


「瀬戸、くん……?」


「……くん、なんて呼び方すんな。反吐が出る」


 春兎は一歩、また一歩と距離を詰めてくる。


 一年前よりずっと背が高くなった彼は、私の逃げ場を塞ぐように、ドンッ! と私の耳元で壁を叩いた。


「久しぶりだね。彼女さん……元気?」


 
 必死で絞り出した私の言葉に、春兎の顔が凶悪なほど美しく歪んだ。


「……は? 彼女? あんなの、お前を忘れるための暇つぶしにもならなかったっての」


「え……暇つぶし、って……」


 あまりに強引な言い草に絶句する私。


 春兎は私を逃がさないように両手で囲い込み、顔を唇が触れそうなほど近づけた。


「一年前、お前と同じクラスになれなくて、俺がどんな気持ちで過ごしてたか知らねーだろ。他の男とヘラヘラ笑いやがって……マジで、殺意わいたんだけど」


「ちょ、春兎……っ、近いよ」


「離さねーよ。今年はお前と同じクラス。……もう神様に感謝するしかないわ」


 春兎の瞳には、私の知らない鋭い熱と、ドロドロの独占欲が宿っていた。


「今日から覚悟しろ。クラス中にお前が『俺の女』だって分からせてやるから」


 強引な独占宣言。


 疎遠だった一年の空白を、春兎の熱い体温が一気に塗り替えていく。


 これが、同じクラスになった俺様王子との、甘くて危険な「本当の始まり」だった。