太陽と狐は「」をする

 神子様。それは灯の名前ではない。
 この天泉之国において、いずれ一族を象徴する神の名を引き継ぐ者の総合的な呼び名。

 さらりと切り揃えられた長髪は控えめでありながらも決して地味とは言い難く、太陽の光を浴びればまるで夜明けのような色味を映し出す濡羽色。
 太陽を埋め込んだような黄金色の瞳は全てを許容する女王たる美しさを持ち、髪と合わせることにより一層際立つ。

 少女の本名は天照(アマテラ)(トモリ)
 由緒正しき神々を取り纏めこの国を治める最上の神、天照大御神(アマテラスオオミカミ)を受け継ぐ“天照家”の娘であり、次期【天照大御神】でもある少女だ。


 一般的に一族を象徴し始祖とされる神の名を受け継ぐ神は家ごとに独自の掟があり、その中で一族の子が競う。
 舞踊であったり、頭脳であったり、武道であったり。
 それぞれの神に最も相応しい能力を持つ者が、己の始祖とされる神、原初の神の名を継ぐことが許されている。


 ただ、天照家で絶対的な判断基準とされているものはたった二つ。


【天照家本家・分家を含む全ての血筋の内、
 最も“神力(シンリキ)が強い” “女子”であること】


 女子である理由。これは言うまでもないが、天照大御神が女神であったからである。

 では神力とはなんなのか。

 神力とは神の権威。
 神力が強い神には逆らえず、また神力の強さによって使える神術(シンジュツ)の効果が変わる。それは世界の始まりに生まれたとされる神々の血が濃ければ濃いほど強まるとされており、神力が強い神は位の高い神であるという証明にもなる。

 故に、この国において神力は圧倒的なステータスなのだ。

 それを優先に考えているのだから、神々を纏める天照家としては間違っていないし、実際に二千年以上の間、この決まりによって選ばれた数多の天照大御神が国や周辺国家と関わってきた。

 これは天照家の絶対事項であり、何人たりとも破ることは許されない。

 そして、その掟に則って選ばれた次の天照大御神こそ、天照灯その人だったのである。