「あっ……!」
机の上に置かれた学習用具が、音を立てて崩れ落ちる。
崩れ落ちた原因は、灯の腕が当たったから。
周りを注意していなかった故の失態だ。
「お拾いいたします」
「大丈夫よ。すぐ拾うわ」
拾おうとする使用人を止め、慌てて椅子から降りようとしたその時。
「そんなことはしなくて宜しい」
後ろから聞こえたのは凛とした冷たい声だった。
「叔母様……」
立っていたのは灯の叔母。
幼い頃に両親を亡くした灯を引き取り、本家の娘として厳しく育ててくれた、いわゆる育ての親である。
「神子様、貴方自分の立場をわかっているの?
神子である貴方が自分から汚すような事をすれば、
周りから舐められるのは当たり前。
貴方は選ばれた神なの。それを弁えなさい」
「……」
叔母の話に、反論も説明もせずに黙り込む。
義理の娘として灯も叔母に感謝はしているし、嫌っているわけではない。
ただ、叔母が発した“神子様”という単語を聞いて、もう嫌だと思ってしまったのだ。


