今日、過ごしたい場所で

「ここで、はっきり『要らない』と答えないのは天音さんの優しさね。分かったわ。じゃあ、もう電話もかけない。でも、最後に一つだけ。楽しい行事だけ来るって言うのはどう?」

「楽しい行事……ですか?」

日下部先生は、自信満々に話し始める。

「そう!今度、新クラスのオリエンテーションがあるの。オリエンテーションと言う名のただの体育館での遊び大会ね。うちのクラスでは、フットサルをする予定なの……楽しくなさそうでしょう?友達もいなかったら、そんなの楽しいはずがないわ。問題はここから。クラスのみんなは、体育館。つまり、教室には誰もいない。一人きりの教室って最高じゃない?本当は施錠するんだけど、特別に開けてあげるわ。確か、天音さんは美術部だったわよね。しかもとっても上手で、賞もたくさんとってる……ねぇ、黒板アートを描いてくれないかしら?」

「はい……?」

「楽しくなかったら、途中で帰ってもいいわ。なんなら、始めから来なくてもいい。まぁ、考えておいて。来週の金曜日だから」

「えっと、あの……」

「あ、私は天音さんと話すの楽しかったわよ。じゃあね」

そう言うと、日下部先生は電話を切ってしまった。お母さんがもう一度、台所から顔を出す。