お兄ちゃんの、いる場所。



​四年生の冬、
わたしは、
一つの決心をしました。


れんお兄ちゃんがいっていた中学校は、
しりつの中学校です。

ふつうにしているだけでは、そこにはいけません。


​れんお兄ちゃんと同じ場所にいきたい。

そう思ったわたしは、
家族にはないしょで、

こっそりお勉強を始めました。


お兄ちゃんがどんな景色を見て、
どんな場所でお友達とお話をしていたのか、
知りたかったからです。


​ある日、
れんお兄ちゃんのお家へ遊びにいったとき、


わたしがこっそり参考書を読んでいるのを、
お兄ちゃんのお母さんに見つかってしまいました。


「……れんのいた学校、目指してくれているの?」


おばちゃんはそう言って、
なみだぐみながら、
いっさつの本を持ってきてくれました。

それは、れんお兄ちゃんが使っていた、
少しはしっこが、すり切れた参考書でした。


「これ、よかったら使って。れんもきっとよろこぶわ」


​手に取ると、
お兄ちゃんのにおいがした気がしました。


こういうのを「形見」っていうのかな。
いなくなった人が、のこしてくれた、
大切な、心の一部。