お兄ちゃんの、いる場所。



​三年生になりました。

学校にもなれて、漢字もたくさんおぼえました。


でも、さい近気づいたことがあります。


お父さんも、お母さんも、近所のおばちゃんも、だれもれんおにーちゃんの話をしません。


​前は「れんくんはね」ってお話してくれたのに。


今は、わたしがれんおにーちゃんの名前を出すと、みんな、ちょっとだけこまったような、悲しそうな顔をします。


​みんな、もうわすれちゃったのかな。


あんなにやさしかったのに。
いっしょに遊んだのに。


わすれちゃうのは、とってもいやです。


でも、わたしの言葉で、
お母さんたちがなきそうになるのも、
もっといやです。


​だから、わたしも、
もうれんおにーちゃんの話はしないって決めました。


​心のなかに、小さなしきりを作って、
れんおにーちゃんとの思い出は全部そこにしまいました。


だれにもさわらせない、
わたしだけの、たから物です。


「お兄ちゃん、ごめんね」


​夜、おふとんのなかで、
小さくつぶやきました。


みんなの前では言わないけれど、

わたしの心のなかには、

ずっとずっと、お兄ちゃんがいるんだよ。

​だれも話さなくなっても、
わたしだけは、
お兄ちゃんがいた世界を覚えているよ。