お兄ちゃんの、いる場所。



三月の空は、
青く澄んでいた。



私は、第一志望の大学に合格した。
​真っ先に報告しに行ったのは、いつもの場所。


「にーちゃん、受かったよ」


石の前に合格通知を置いて、手を合わせる。


風に乗って届くお線香の香りが、
優しく鼻をくすぐった。


​「……ねえ、にーちゃん。私、あと二年で大人になっちゃうよ」


​お兄ちゃんが知らない
「二十歳」という年齢に、
私はもうすぐ手が届こうとしている。


お酒を飲んだり、選挙に行ったり。
にーちゃんが経験できなかった「大人の世界」に、私は一人で足を踏み入れる。



にーちゃんが、ずっと中学生のまま私の心にいるから。
自分が大人になっていくのが、時々すごく不思議で、少しだけ申し訳ないような気持ちになることもある。


でも、にーちゃんに憧れて、
にーちゃんに追いつきたくて
走り続けてきた結果が、今の私なんだよね。


​誰かの心に寄り添える人になりたい。
それは、あの日からずっと変わらない、

私の中に咲いている一輪の花のような夢。