高校の卒業式が近づくにつれて、
周りは進路や別れの話でそわそわし始めた。
私は鏡の前に立って、
制服のシルエットを見つめる。
……たぶん、お兄ちゃんと同じくらいの身長になったよ。
ネットの記事か何かで読んだことがある。
「死んだ人のことは、まず声から忘れていく」って。
それを知ったとき、
私は怖くなって何度も何度も、心の中でにーちゃんの声を再生した。
でも、そんなの嘘だ。
私は、あの優しくて、
少し落ち着いた声を、今でもはっきり覚えている。
私の名前を呼ぶ声。
「はなのてぃあら、似合ってるよ」
って笑った声。
「またね」
って言った、あの日の小さな約束の声。
耳を澄ませば、今だってすぐそばで聞こえる気がする。
にーちゃんは私の中でずっと生きている。
姿形が変わっても、
身長を追い越しても、
あの声が私を「私」にしてくれる。



