お兄ちゃんの、いる場所。



ある日、
大きな美術コンテストがあると聞き、
私は迷わず、ずっと描きたかった絵に取り組むことにしました。


タイトルは、『天国』。
​私が6歳のときに想像した、
あのお花がいっぱい咲いている草原です。


真っ白なカスミソウや、
黄色い菜の花、
色とりどりの野の花が、
風に揺れている景色。


その真ん中に、
一人の男の子の、
すごく、すごくおぼろげな後ろ姿を描きました。


​それは、蓮お兄ちゃん。
あの優しいお兄ちゃんの背中です。


​私はお兄ちゃんの背中を、わざとぼかして描きました。

今の私には、
お兄ちゃんの顔がはっきりと思い出せない日もあるからです。



​そして、その絵が
コンテストで賞を取ったという知らせが届いたとき、
私はお母さんと一緒に蓮お兄ちゃんのお墓へ向かいました。


お墓の前に、賞状を見せながら、


「お兄ちゃん、賞をもらったよ」


と報告しました。



また一つ、
お兄ちゃんを、
新しい形で残すことができました。