お兄ちゃんの、いる場所。



受験勉強はいよいよ本格的になる六年生。

わたしは毎日、
机にかじりついていました。


そんなある日、
ふと息抜きに庭へ出ると、

すみっこの方に
真っ白なカスミソウがふわふわと咲いていました。


小さな、雪のような花。

それを見た瞬間、おさないころに
お兄ちゃんが作ってくれた
花冠のことを思い出しました。


​わたしは、
カスミソウを少しずつ、つみ取って、
記おくの中のお兄ちゃんの指先を思い出しながら、
ゆっくりと編んでいきました。


お兄ちゃんみたいに上手にはできないけれど、
一編みごとに「ありがとう」の気持ちをこめて。


できあがった白い花かんむりを持って、
わたしはお墓へ向かいました。


冷たい石の上に、
ふわっと花かんむりをそえると、
そこだけパッと明るくなった気がしました。


風にゆれるカスミソウを見つめていると、
お兄ちゃんが

「がんばれ」

って笑ってくれているような気がした。