幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。

「――……っ!!」

 声にならない悲鳴を出して、僕はガバッと跳ね起きた。

 荒い息を吐きながら見開いた視界には、赤い炎も、めぐみのキョトンとした顔もない。
 あるのは、見慣れた自分の部屋の、白い壁紙だけだった。

「…………」

 フーッと大きく息を吐きながら、手のひらで顔を覆う。

(…………なんだよ……夢かよ!!)

 ひどく安堵して、ベッドの上で項垂れた。

 窓の外からは、鼓膜を揺らすような蝉の大合唱が響いている。

 いよいよ夏休みに入り、尋常じゃない暑さだ。
 午前中の部活で汗だくになり、帰宅後にシャワーを浴びて横になっていたら、いつのまにか寝落ちしていたらしい。

(……なんなんだ、あの夢。一度目と二度目の失恋をミックスしたような、最悪の夢は!)

 額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、一人で悪態をついた。
 だが、そこでハッとする。

 夢の中の、めぐみの言葉――。

『わたし、なっちゃんに「すき」っていったっけ?』

 そう――あの夢は、変なところで現実とリンクしている。

 めぐみはめでたく、僕の本当の彼女になってくれた。
 でもそれは、公園で僕の『付き合おう』という言葉に『うん』と頷いてくれただけで。
 実はまだ、めぐみの口から『好き』という言葉は、聞いていない。
 表情や態度の一つひとつから、好意は十分に伝わってきてはいるけれど――。

 ――ブブッ。

 枕元にあるスマホが光った。
 めぐみからのメッセージだ。

『部活終わったよ! 時間通りに着きそう』

 それを見て、慌ててベッドを降りる。
 ハンガーにかけてあった半袖の前開きシャツを羽織り、ジーパンを穿いてリビングへと向かった。