幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】

 ……やばい。嬉しい。
 どうしよう。

 両手を伸ばし、その柔らかい両頬を優しくつまんで、外側へとむにゅっと引っ張った。

「……へ!? なに!?」

 その行動に、めぐみが驚いて抗議の声を上げる。
 僕は、込み上げてくる嬉しさをまったく隠しきれずに、笑いながら聞いた。

「……やきもち?」

「……ちがっ……!」

 めぐみは真っ赤になって一瞬否定しようとしたが。

「いや。やきもちだろ、それ」

 僕がもう一度、確信を持ってそう言うと。

 彼女は観念したように力が抜け、小さく「……うん」と頷いた。


 その瞬間。

 僕はめぐみの腕を引っ張って立ち上がらせ――そのまま強く、抱き寄せた。


「…………」

 僕の腕の中で、めぐみがおとなしくなる。

 彼女のふわふわした髪が頬に当たってくすぐったい。
 真夏の夜の生ぬるい空気と、遠くで鳴いている虫の声が、僕たちを包み込んでいた。


「……付き合お」

 彼女の耳元で、ねだるように甘く囁いた。

「…………うん」

 めぐみは、素直に言うことを聞く子供のように、僕の胸元で小さく頷いた。


 嬉しくて、愛おしくて、離したくなくて。
 ギュッと抱きしめる腕に力を込める。

 すると、めぐみもそっと手を伸ばし、僕の背中のTシャツの裾を、キュッと握り返してくれたのがわかった。


 僕は――めぐみへの三度目の失恋を、回避できたのだ。


 抱きしめる腕の中に彼女の輪郭をたしかに感じて、僕の世界のすべてが、今ここに凝縮されているような感覚に陥る。

 これは現実だよな?
 悪夢ばかり見る僕にしては珍しい、至極都合のいい夢ではないよな?

 半信半疑でいつもの脳内会議を繰り返す僕を、背中のシャツを握りしめる彼女の小さな手が、現実だと引き留めてくれる。

 限界突破している心臓の音が彼女に丸聞こえなのではないかと焦りながらも、僕はあふれる幸福感でいっぱいだった。