幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

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 数曲続いたなっちゃんのターンが終わり、彼が「ちょっとトイレ」と部屋を出ていった。
 すかさず、ノリのいい学級委員の男子がマイクを奪い、みんなで合いの手を入れられるような定番の「男子の失恋ソング」を入れて、部屋はさらなるカオスと熱狂に包まれた。

 数分後、なっちゃんがトイレから戻ってきたのが見えた。
 戻ってきてからしばらくは、外に行かないだろう。
 つまり、今なら廊下で鉢合わせずに済むはずだ。
 私はこのタイミングを見計らって、「ジュースのおかわり行ってくるね」と立ち上がった。
 葵のコップも空になっていたので、「取ってきてあげる! 何がいい?」と聞くと、「ありがと。じゃあコーラ」というので、「オッケー」と答えて空のコップを二つ持ち、重い防音扉を開けて外に出た。


 廊下に出ると、中の狂ったような喧騒が嘘のように静かだ。
 他のボックスから微かに歌声が漏れてくるものの、それも遠くに感じられ、空調がよく効いているせいで一気に肌寒さを覚えた。

 廊下の突き当たりにあるドリンクバーのコーナーにたどり着く。
 私のメロンソーダ、隣の機械で葵のコーラを注ぎ終わり、コップを持って振り返った時だった。

「…………!」

 廊下をこちらに向かって、早足で歩いてくる人影に気づいた。

 ――なっちゃんだ。

(えっ、なんで!? 戻ってきたばっかりだったのに! タイミングずらしたのに!)

 ここは廊下の端の行き止まりで、逃げ場がない。
 おまけに私は両手に並々と注がれたジュースを二つも持っているため、走って逃げることもできない。

 あたふたとしている間に、なっちゃんは私の目の前まで迫ってきた。

「……ちょっと来て」
「えっ」
 有無を言わさぬ低い声。

 なっちゃんは、コップを持った私の両手首をそっと、けれど逃げられない強さで掴むと、そのまま廊下から死角になる、非常階段の前の薄暗い踊り場へと私を引っ張っていった。