文化祭二日目も、一日目同様、大いに楽しめた。
私は、上級生のクラスの出店で買った、水色の可愛い虎(?)のようなオリジナルキャラクターの手作りお面をすっかり気に入り、ずっと頭の横に付けていた。
遊びに来たお兄ちゃんには「なにそれ」と呆れたように苦笑いされたけれど。
クラスの子たちと同じはっぴを着て、たくさん笑って、高校生活初めての文化祭を思う存分満喫した。
でも、頭の片隅では、なっちゃんのことばかりがずっと引っかかっていた。
(なっちゃん、なんか話したそうにしてる……)
視線を感じたり、近づいてくる気配を察知するたび、別の作業をしているフリをしたり、友達の輪に紛れ込んだりして、徹底的に目を逸らし続けた。
彼が何を話そうとしているのかわからなくて、怖かったからだ。
昨日、なんで真っ赤になってトイレに逃げたのかと追及されるのも嫌だったし。
何より、彼の口から「好きな人」の名前を聞かされるのも、嫌だった。
◇
なっちゃんを避け続けているうちに、文化祭はあっという間に終わりの時間を迎えた。
後夜祭のグラウンドで花火を観て楽しんだあと、クラスのみんなで打ち上げへと向かった。
今回は、学校近くの大きなカラオケボックスのパーティールームを貸し切ることになった。
男子女子ともにカラオケをこぞって希望した理由は――もちろん、この人だ。
「朝井、これ歌って!」
「いや、まずは昨日のアンコールからでしょ!」
部屋の中央で、なっちゃんがクラスメイトたちに囲まれながら、リクエスト曲をタッチパネルに次々と勝手に入れられている。
「……いや、喉死ぬから! みんな自分のも入れろよ」
苦笑いしながら文句を言っている彼は、なんだか少し疲れているようにも見える。
(……そうだよね。クラスの準備もやりながら、バンドの練習もずっとしてきたんだもんね)
遠くからその姿を眺めながら、密かに心配していた。
やがて、なっちゃんの歌が始まった。
昨日のステージで披露した曲ではない、誰かがリクエストした最近流行りのアップテンポな曲も、信じられないくらい上手だった。
私は隅の席で、コップの中の炭酸をストローで吸いながら、彼とは絶対に目が合わないように気をつけながら、こっそりと見つめていた。
隣の葵は「おなかすいた〜」と言いながら、大皿のフライドポテトをパクパクとつまんでいる。
三十人も入るパーティールームはぎゅうぎゅう詰めで、冷房がまったく意味をなさないくらい暑い。
なっちゃんの周りには、クラスの女の子たちもたくさん集まっている。
ライブの圧倒的なパフォーマンスによる効果なのか、前よりも明らかにキャッキャと黄色い声を上げられている感じがあった。
そして流れる、昨日ステージで歌ったあの二曲。
昨日と同様、なっちゃんはマイクを握って大切に歌い上げ、まさにライブのアンコールのように大きく湧いた。
みんなも手拍子をして一緒に歌っている。
この二曲の間は、なっちゃんの方をどうしても直視できなくて、モニターの画面の歌詞を追いながら、小さく口ずさんだ。
元々普通に好きで、何気なく聴いていた曲なのに。
なっちゃんが歌っているのを聴いてからというもの、まったく別物のように感じてしまうくらい、すべての歌詞が心を震わせてくる。
また、胸の奥がツンと痛くなる。
私は、上級生のクラスの出店で買った、水色の可愛い虎(?)のようなオリジナルキャラクターの手作りお面をすっかり気に入り、ずっと頭の横に付けていた。
遊びに来たお兄ちゃんには「なにそれ」と呆れたように苦笑いされたけれど。
クラスの子たちと同じはっぴを着て、たくさん笑って、高校生活初めての文化祭を思う存分満喫した。
でも、頭の片隅では、なっちゃんのことばかりがずっと引っかかっていた。
(なっちゃん、なんか話したそうにしてる……)
視線を感じたり、近づいてくる気配を察知するたび、別の作業をしているフリをしたり、友達の輪に紛れ込んだりして、徹底的に目を逸らし続けた。
彼が何を話そうとしているのかわからなくて、怖かったからだ。
昨日、なんで真っ赤になってトイレに逃げたのかと追及されるのも嫌だったし。
何より、彼の口から「好きな人」の名前を聞かされるのも、嫌だった。
◇
なっちゃんを避け続けているうちに、文化祭はあっという間に終わりの時間を迎えた。
後夜祭のグラウンドで花火を観て楽しんだあと、クラスのみんなで打ち上げへと向かった。
今回は、学校近くの大きなカラオケボックスのパーティールームを貸し切ることになった。
男子女子ともにカラオケをこぞって希望した理由は――もちろん、この人だ。
「朝井、これ歌って!」
「いや、まずは昨日のアンコールからでしょ!」
部屋の中央で、なっちゃんがクラスメイトたちに囲まれながら、リクエスト曲をタッチパネルに次々と勝手に入れられている。
「……いや、喉死ぬから! みんな自分のも入れろよ」
苦笑いしながら文句を言っている彼は、なんだか少し疲れているようにも見える。
(……そうだよね。クラスの準備もやりながら、バンドの練習もずっとしてきたんだもんね)
遠くからその姿を眺めながら、密かに心配していた。
やがて、なっちゃんの歌が始まった。
昨日のステージで披露した曲ではない、誰かがリクエストした最近流行りのアップテンポな曲も、信じられないくらい上手だった。
私は隅の席で、コップの中の炭酸をストローで吸いながら、彼とは絶対に目が合わないように気をつけながら、こっそりと見つめていた。
隣の葵は「おなかすいた〜」と言いながら、大皿のフライドポテトをパクパクとつまんでいる。
三十人も入るパーティールームはぎゅうぎゅう詰めで、冷房がまったく意味をなさないくらい暑い。
なっちゃんの周りには、クラスの女の子たちもたくさん集まっている。
ライブの圧倒的なパフォーマンスによる効果なのか、前よりも明らかにキャッキャと黄色い声を上げられている感じがあった。
そして流れる、昨日ステージで歌ったあの二曲。
昨日と同様、なっちゃんはマイクを握って大切に歌い上げ、まさにライブのアンコールのように大きく湧いた。
みんなも手拍子をして一緒に歌っている。
この二曲の間は、なっちゃんの方をどうしても直視できなくて、モニターの画面の歌詞を追いながら、小さく口ずさんだ。
元々普通に好きで、何気なく聴いていた曲なのに。
なっちゃんが歌っているのを聴いてからというもの、まったく別物のように感じてしまうくらい、すべての歌詞が心を震わせてくる。
また、胸の奥がツンと痛くなる。



