「……へ?」
突然の言葉に、間抜けな声で聞き返してしまった。
「好きって?」
「そのままの意味」
由利さんは、表情を変えずにハッキリと言い切った。
「……俺、好きな人教えたばっかりじゃなかった?」
困惑して尋ねると、彼女は「うん」と頷く。
「でも、彼女ではないんでしょ? だったら、いいじゃない」
「…………」
完全に呆気にとられた。
大人しそうな見た目に反して、まっすぐで、強引だ。
だが、曖昧な態度をとって、めぐみに変な誤解をされるわけにはいかない。
僕は腹を括り、真剣な顔を作って言った。
「いや……よくないわ。ごめん」
明確に拒絶した。
それでも由利さんは、引かなかった。
「でも、私の気持ちだもん。自由でしょ?」
(え、こいつ……強い……)
圧倒されて言葉を失う。
しかし、ふと身体の前で握られている両手に目をやると――その白い指先が、微かに震えていた。
(勇気、出してくれたのか)
そう気づいた瞬間、彼女の不器用な強がりが理解できて、それ以上は突き放す言葉を紡げなくなった。
由利さんは「ふう」と小さく息を吐くと、再び僕の隣に座り直した。
「……告白されるの、慣れてそうだね。モテそうだもん」
少しだけトーンを落として、ぽつりと言う。
「……いや、そんなことないけど」
僕は否定したが、由利さんはそれを謙遜と受け取ったのか、少し意地悪な響きを含ませて言った。
「モテるのに、自分の好きな子とはまだ付き合えてないんだね」
痛いところを的確に抉られ、思わず反射的に叫んでいた。
「……うるさいわっ!」
(あっ)
言ってから、すぐにやばいと焦った。
めぐみの話題だったからとはいえ、他の女子に対して『無難スマイル』を剥がし、素の態度を出してしまった。
恐る恐る、隣に目を向けると。
由利さんは僕の反応を見て、驚くでも傷つくでもなく、なぜか少し嬉しそうにクスクス笑っていた。
(……なんか、この人……調子狂うわ)
完全にペースを握られた僕は、大きなため息をつきながら、手元のぬるくなったお茶を口に含んだ。



