幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

「……お疲れさま」

 静かな声。

 そこに立っていたのは、由利さんだった。

「あ、お疲れ」
 僕が短く応えると、彼女はそのまま僕の隣にそっと腰を下ろした。

(……あ、まずい。また誰かに見られたら、あの面倒な噂に尾ひれがつくんじゃ……)
 僕が内心焦り、適当な理由をつけて立ち去ろうかと考えた、その時だった。

「……あれ。夏樹?」

 前方から、まさかの人物に声をかけられた。

「……光くん」
 声の方に目をやると、そこには昨日めぐみの家で久しぶりに会ったばかりの、光くんが立っていた。

 大学一年生の光くんは、実は去年までこの高校に通っていたOBでもある。
 隣には、同じく卒業生らしき友達が二人、暇そうに立っていた。

「来てたんだ」
「おー。懐かしみに来たわ」
 光くんが緩いトーンで返す。

「めぐに会ったの?」
 僕が尋ねると、光くんは「うん」と頷いた。
「どこかの屋台で買った、変なお面付けてたわ」
「…………」
 その情景が頭に浮かび、僕は思わず「ふっ」と吹き出してしまった。

 光くんの視線が、僕の隣に座る由利さんへとチラッと向けられる。
 僕はハッとしてベンチから立ち上がり、光くんの元へ駆け寄った。

「……ちょっと」

 光くんの腕を掴んで友達から少し引き離し、小声で必死に話しかける。

「……めぐに変なこと言わないでね」
「なに、変なことって」
 怪訝な目をする光くんに、僕は焦りながら口止めする。
「俺が、女の子と二人でベンチにいたとかさ……そういうの」

「……よくわかんないけど、わかった」
 光くんは、僕の事情など特に興味もなさそうに、すんなりと了承してくれた。
 ……まず一安心だ。

「じゃあな」

 手を振って去っていく光くんたちを見送る。