幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

 文化祭二日目。
 今日もはっぴを着て、頭にねじりハチマキを巻き、僕はヨーヨー屋台のシフトに入っていた。

「……ヨーヨーやってます〜いかがですか〜」

 適当に愛想よく勧誘をこなしていたつもりが、近くで水風船を作っていた葉山が不思議そうに僕の顔を覗き込んできた。
「……ん? お前、なんか眉間にシワ寄ってるぞ?」
「……え」
 僕は慌てて、眉間のあたりを指で揉みほぐした。

 無意識だった。
 けれど、僕の心の中には明確な不満と不安が渦巻いていた。

 今朝から、めぐみと一度も会話ができていない。
 それどころか、目が合うことすら一度もない。
 僕が話しかけようと近づくと、まるでセンサーでもついているかのように素早く察知して、遠くの方へと逃げてしまう。

(一体、なんなんだ……)

 照れているのか? 恥ずかしいのか?
 昨日、あのまま真っ赤になってトイレに逃げ込んだのだから、きっとそうに違いないと最初は思っていた。
 けれど、こうも徹底的に避けられ続けると、昨晩ひとりで散々浮かれすぎた分、急速に嫌な予感がしてくる。
 話して確かめられないと、また俺がひとりで勘違いしてるだけなのではと不安になるのだ。

 過去二度の「勘違い、浮かれ、からの失恋トラウマ」が蘇り、胃のあたりがキリキリと痛む。
 三度目の失恋なんて――絶対にしたくないんだ。

 おまけに、昨晩は興奮と歓喜でまったく眠れなかったため、絶望的に眠い。

 ただ救いだったのは、うちのクラスのヨーヨーすくいはシンプルだが手作りの装飾の雰囲気が良く、お客さんのウケも上々で、接客も気楽だったことだ。

 ◇

 無事に自分のシフトの時間を終え、僕は喧騒から逃れるように中庭へと向かった。

 木陰にある自販機で冷たい緑茶を買い、きつく結んでいたハチマキを外す。
 疲労と寝不足で重い身体を、目の前のベンチにドサリと沈め、お茶を一口飲んだ。

 この後、葉山たちと他クラスの出し物を回る約束をしているが、一瞬だけ一人で休憩したかった。
 スマホを取り出し、『先行ってて。後で合流する』とメッセージを送信しておく。

(……めぐ、どこいるんだよ)

 ため息とともに、ふーっと長く息を吐き出す。


 ふと、こちらに近づいてくる人影に気づき、顔を上げた。