幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

 ――ピーンポーン。

 めぐみの家のインターホンを鳴らすが、誰も出ない。

「…………っ」
 全速力で走ってきたせいで、息がひどく上がっている。
 ステージで全力を出し切った直後に走るもんじゃない……肺が焼けるように苦しかった。

 あの後、体育館から教室へ走り向かったものの、めぐみの姿はおろか、彼女のスクールバッグすらなかった。
 慌てて昇降口へ向かい下駄箱を確認しても、見慣れた小さなローファーはすでに消えていた。
 それで結局、彼女の家まで走ってきてしまったのだ。

 しばらく待っていても、ドアの向こうから反応はない。
 もしかして、どこか別のところに寄ってるのか……?
 諦めて引き返そうかと踵を返しそうになったところで、ガチャッと重いドアが開いた。

「……あれ、夏樹じゃん。久しぶり」

 気怠そうな顔で顔を出したのは、めぐみの兄の光くんだ。
 大学生になってからあまり見かけていなかったが、相変わらず緩い空気を纏っている。

「……久しぶり。……めぐは?」
 荒い息を整えながら尋ねると、ふと玄関の隅に、さっき学校になかったはずのめぐみのローファーが脱ぎ捨てられているのが見えた。

「さっき帰ってきて部屋にいるけど、反応ないから寝てるかも」
 光くんは欠伸を噛み殺しながらそう言うと、そのまま「上がったら?」とだけ残し、奥のリビングへと戻っていってしまった。
 ご両親は、どうやらまだ帰ってきていないらしい。

 僕は靴を脱ぎ、めぐみの部屋の前に立った。
 中から物音はまったく聞こえない。
「……めぐ?」
 扉越しに声をかけてみるが、反応がない。

(光くんの言う通り、寝てるのか……? さすがに勝手に開けないほうがいいよな……)
 ドアノブに手をかけたまま躊躇する。

 だが、ここまで必死に走ってきたのだ。
 どうしても、一言だけ文句を言ってやりたい。

 いや……本当はただ、彼女の顔が見たかった。

「……開けるよ?」

 少しだけ声を張り、思い切ってガチャッ……と、そっとドアを開けた。