幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

 ◇

「レジ見てるから、下駄箱まで見送ってきたら?」
 葵が気遣ってくれたので、お言葉に甘えて私はお母さんと一緒に廊下を歩いた。

「お父さんねえ、来られなくなっちゃったのよ。入院している子で少し具合の悪い子がいて、ちょっと病院を離れられなくてね……」
 お母さんが申し訳なさそうな顔をして事情を説明してくれた。
「そうなんだあ。残念だけど、仕事だもん、仕方ないよ。お父さんによろしく伝えておいて」

 うちのお父さんは無口でおとなしいけれど、動物にも、もちろん家族にも、深い愛を注いでくれる人だ。
 来られなかったお父さんが一番残念がっているだろう。

 下駄箱に着き、お母さんがスリッパから靴に履き替える。
「めぐみが楽しそうにしてるのを見られてよかった。葵ちゃんにも会えたし」
 そう言って満足そうに目を細めた後、ふと思い出したように顔を上げた。

「あっ、そういえば。なっちゃんも同じクラスよね? 教室にいなかったけど」
「っ!」

 急になっちゃんの名前を出され、私の肩がピクッと跳ねた。
 今朝、屋台の裏で髪に触れられた時の、至近距離の彼の顔がフラッシュバックする。

「な、なっちゃんは今シフトじゃないから……どっか回ってるんじゃないかな!?」
 動揺のあまり、声が見事に裏返ってしまった。
「そうなんだ。なっちゃんのはっぴ姿も見たかったわ〜。じゃあ、なっちゃんにもよろしくね!」
「……うん!」

(……普通に話せたらね)

 心の中でこっそりと付け足しながら、私は大きく手を振ってお母さんを見送った。