めぐみが小走りで去っていった後、いよいよ初めての音合わせが始まった。
普段はテンションが高く騒がしい嶋も、ずっと大人しく座っている由利さんには少し気を遣っているようで、優しげな声で話しかけていた。
「由利さん、楽譜渡せたの一昨日だったし、全然時間なかったけど……今日、合わせられそう? 大丈夫?」
嶋が下から覗き込むように伺うと、由利さんは静かに鍵盤を見つめたまま、「……大丈夫」と小さく頷いた。
「……よし、じゃあ、まずは一曲目の方から軽く合わせてみっか!」
ドラムセットに座った嶋が、スティックを頭上で打ち鳴らす。
カン、カン、カン、カンッ!
カウントが終わった瞬間。
由利さんが、フッと小さく息を吸い込んだ。
その一瞬で、彼女の纏う空気がガラリと変わる。
すっと自分だけの世界に入り込んだかのように、目の前の白黒の鍵盤の上に小さな指先を滑らせる。
鳴り響いたのは、圧倒的に鮮やかで、力強くも繊細なピアノの前奏だった。
(……すげえ)
僕はその音色に完全に圧倒されそうになりながらも、マイクを握る手に力を込めた。
カラオケで歌う時よりも何倍も丁寧に、彼らが紡ぐ音の波に、自分の声を乗せていく。
桜の情景と、切ない恋心を歌ったアップテンポなナンバー。
ドラム、ベース、ギター、そしてピアノ。
それぞれの音が僕の声と重なり合い、プレハブの中にひとつの塊となって響き渡った。
普段はテンションが高く騒がしい嶋も、ずっと大人しく座っている由利さんには少し気を遣っているようで、優しげな声で話しかけていた。
「由利さん、楽譜渡せたの一昨日だったし、全然時間なかったけど……今日、合わせられそう? 大丈夫?」
嶋が下から覗き込むように伺うと、由利さんは静かに鍵盤を見つめたまま、「……大丈夫」と小さく頷いた。
「……よし、じゃあ、まずは一曲目の方から軽く合わせてみっか!」
ドラムセットに座った嶋が、スティックを頭上で打ち鳴らす。
カン、カン、カン、カンッ!
カウントが終わった瞬間。
由利さんが、フッと小さく息を吸い込んだ。
その一瞬で、彼女の纏う空気がガラリと変わる。
すっと自分だけの世界に入り込んだかのように、目の前の白黒の鍵盤の上に小さな指先を滑らせる。
鳴り響いたのは、圧倒的に鮮やかで、力強くも繊細なピアノの前奏だった。
(……すげえ)
僕はその音色に完全に圧倒されそうになりながらも、マイクを握る手に力を込めた。
カラオケで歌う時よりも何倍も丁寧に、彼らが紡ぐ音の波に、自分の声を乗せていく。
桜の情景と、切ない恋心を歌ったアップテンポなナンバー。
ドラム、ベース、ギター、そしてピアノ。
それぞれの音が僕の声と重なり合い、プレハブの中にひとつの塊となって響き渡った。


