幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。

 ◇

 やがてバンドメンバーがドヤドヤとプレハブに入ってきて、狭い空間は一気に男臭く、騒がしくなった。
 換気のために防音扉を開け放ち、それぞれが楽器のセッティングや楽譜の確認をしていた時だった。

「……なっちゃん!?」

 入り口から、素っ頓狂な声が飛び込んできた。
 振り返ると――サックスを持たずに運動靴を履いためぐみがいた。
 瞬きを繰り返しながら、僕を見ている。

「うわっ、見つかった」

 思わず本音が漏れる。
 まあ、本番のステージまで完全に隠し通せるとは思っていなかったけれど。

「えっ、なっちゃん何してるの?」

 動揺を隠すため、そっぽを向いて「……今日はバスケ部休みだから、練習」と答える。
 ところが、背後からやってきた嶋があっさりとライブの件をバラしてしまった。

「ええええ!? なっちゃんが歌うの!?」

 大きく見開かれた瞳は、純粋な好奇心と期待でキラキラと輝いていた。
 その瞬間、胸の奥で、どうしようもない嬉しさがじわじわと広がっていく。

 めぐみが……僕の歌を楽しみにしてくれている。

 ニヤけてしまいそうになるのを堪えながら、心の中で強く拳を握りしめた。

(……っしゃ。頑張ろ)