今日は放課後の部活がない。
明日、バレー部が県大会につながる大事な試合を控えているとかで、体育館を全面貸切にするためだ。
空いた放課後の時間を利用して、僕は軽音部のバンドメンバーたちと初めて音を合わせるため、渡り廊下の奥にあるプレハブ小屋へと向かった。
重い防音扉を開けて中に入ると、狭い室内にはまだ嶋たちの姿はなく、部屋の奥にある電子ピアノの前に、一人の知らない女子生徒がポツンと座っていた。
長く艶やかな黒髪を真っ直ぐに下ろした、大人びた横顔。
(もしかして……)
「……由利さん?」
僕が探り探り声をかけると、彼女は静かに顔を上げ、「はい」と短く答えた。
この子か。
先日、嶋が「あの二曲をやるなら、やっぱりピアノがほしい。八組にピアノがすごく上手い子がいるらしいから、ダメ元でアプローチしてみる」と言っていた。
どうやら彼女が、その誘いを二つ返事で承諾してくれたという『八組の由利さん』らしい。
「五組の朝井です。ボーカルやります、よろしく」
僕が軽く頭を下げて挨拶をすると、彼女は少しだけ戸惑ったように目を伏せ、「……よろしく」と消え入るような声で小さく返してきた。
(……人見知りか?)
初めて見る顔だし、おそらく彼女も高校からの外部生だろう。
それ以上無理に話しかけるのはやめておこうと判断し、僕は適当なパイプ椅子に座って嶋たちが来るのを待った。
明日、バレー部が県大会につながる大事な試合を控えているとかで、体育館を全面貸切にするためだ。
空いた放課後の時間を利用して、僕は軽音部のバンドメンバーたちと初めて音を合わせるため、渡り廊下の奥にあるプレハブ小屋へと向かった。
重い防音扉を開けて中に入ると、狭い室内にはまだ嶋たちの姿はなく、部屋の奥にある電子ピアノの前に、一人の知らない女子生徒がポツンと座っていた。
長く艶やかな黒髪を真っ直ぐに下ろした、大人びた横顔。
(もしかして……)
「……由利さん?」
僕が探り探り声をかけると、彼女は静かに顔を上げ、「はい」と短く答えた。
この子か。
先日、嶋が「あの二曲をやるなら、やっぱりピアノがほしい。八組にピアノがすごく上手い子がいるらしいから、ダメ元でアプローチしてみる」と言っていた。
どうやら彼女が、その誘いを二つ返事で承諾してくれたという『八組の由利さん』らしい。
「五組の朝井です。ボーカルやります、よろしく」
僕が軽く頭を下げて挨拶をすると、彼女は少しだけ戸惑ったように目を伏せ、「……よろしく」と消え入るような声で小さく返してきた。
(……人見知りか?)
初めて見る顔だし、おそらく彼女も高校からの外部生だろう。
それ以上無理に話しかけるのはやめておこうと判断し、僕は適当なパイプ椅子に座って嶋たちが来るのを待った。


