幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

 そして、放課後までの少し気の抜けた休み時間。

 廊下に一番近い席に座っているなっちゃんが、他クラスの女の子から教室の窓越しに話しかけられている。
 たまにこんなふうに、小学校や中学校から一緒だった顔見知りの女の子が、なっちゃんに好意的な態度で話しかけていることがある。
 そういう時の彼は、相変わらず誰に対しても人当たりが良くて、丁寧な笑顔を向けている。

 私は、なぜかそういう光景をあまり見ちゃいけないような気がして、いつも視線を逸らすように気をつけている。

 今回も、なんとなく手元のノートに目を落として見ないふりをしていた、その時だった。

「朝井っ!! あの件、考えてくれた!?」

 女の子の背後から、ものすごくデカい声が割り込んできた。
 ビクッとして顔を上げると、そこにいたのは、小学校から一緒で、何度か同じクラスにもなったことのある、軽音部の男の子、嶋《しま》だった。

 会話を邪魔された女の子たちは、気まずそうに顔を見合わせて去っていってしまった。

「……あー」
 なっちゃんが、悩ましげな声を出す。

 そんなことはお構いなしに、彼は廊下から一歩教室に踏み込み、なっちゃんの机の前に立つと。
「頼むっ! お前しかいないんだよ!」
 ガッ! と自分のおでこをなっちゃんの机に擦り付け、両手をパンッと合わせて、文字通り全身で拝み倒し始めたのだ。

「…………」
 なっちゃんは、机に突っ伏した彼の頭を見下ろしながら、数秒間「んー……」と唸って悩んでいた。
 やがて、短くため息をついて口を開く。
「……わかった。やるよ」
「マジっ!?」
 顔を上げた彼の目は、キラキラと星が飛んでいるかのように輝いていた。
「サンキュー!!」
 彼はなっちゃんの手を両手でガシッと握りしめ、上下にブンブンと激しく振り回す。

「じゃあ、練習の予定送るな! ホントよろしくなー!!」
 そう嵐のように叫び残すと、彼は風のような猛スピードで廊下を走り去っていった。

 あっけにとられてその光景を見ていた私は、思わず前のめりになってなっちゃんの背中に声をかけた。
「……なっちゃん、何お願いされてたの?」
「ん?」

 振り返ったなっちゃんは、何秒か私の目を見た後、視線を逸らした。

「……秘密」
「えー、なにそれ!」
 教えてくれないなんて、余計に気になるじゃないか。
 一体なんだろう。

 私は首を傾げて、彼の広い背中を見つめた。

 ◇

 まもなく帰りのホームルームの時間となった。
 中間テストも終わり落ち着いたということで、いよいよ初めての席替えが行われた。

 くじ引きの結果、私が引いたのは、真ん中あたりの列の、若干前寄りというなんとも微妙な位置だった。
 大好きな窓際の席は、今回はゲットできなかった。

 そして、なっちゃんが引いたのは、廊下側の列の、後ろの方の席だった。
 私の方が前になったため、授業中、ふと顔を上げた時になっちゃんの背中を見ることができなくなってしまった。