幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。〜【完結】

 数分後。
 僕はリビングのテーブルで、めぐみと横に並んで座っていた。

 休みの日に会えるのは、純粋に嬉しい。
 しかも、僕の大好きな髪型。

 ……嬉しいのだけど、至近距離から漂う甘い香りといい、これはひどく心臓に悪い。

 そしてもうひとつ解せないのが、テーブルの向かい側だ。
 なぜか父さんが、ニコニコしながら一緒に座っている。
「……なに、父さん」
 僕がジト目で見ると、父さんは手元に仕事の専門書らしきものを広げながら言った。
「いやあ、俺も助けられるかもしれないだろ!?」
 本を読むフリをしているが、チラチラとこちらを見て、明らかに自分の出番(活躍の機会)を待っている。

 我が家において、めぐみの好感度は両親ともに異常に高いのだ。

 呆れながらも、気を取り直してめぐみのノートに目をやる。
 僕は何の教科から手をつけるか決めていなかったが、めぐみに合わせて数学をやることにした。

 試験範囲のページをパラパラと見ていけば、大体なんとなく解き方を思い出してサラサラと進められた。

 しかし、隣のめぐみはシャーペンを握ったまま「うーん……」と小さく唸り、完全に手が止まっている。

「……どこ?」
 短く声をかけると、めぐみはこちらへ教科書をすり寄せてきた。
「……ここ。なんでこの公式になるのか、わかんなくて……」

 彼女の細くて白い指先が、複雑な数式を指差している。
 その箇所に視線を落とそうと顔を近づけると、自然と彼女の華奢な肩と僕の肩の距離が縮まった。

 ふわりと、また良い香りがする。

(集中しろ、俺……)

 あらゆる邪念を頭から必死に振り払い、僕は数字の羅列だけを睨みつけた。

「……たとえば、これはこう分解できて……」

 適当な図を書きながら噛み砕いて説明してやると、めぐみは「あ! そういうことかあ!」と、思った以上にスムーズに理解していった。