幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。

 ◇

 数分後。
 リビングのテーブルで、めぐみと並んで座っていた。

 休みの日に会えるのは、純粋に嬉しい。
 しかも、僕の大好きな髪型。
 それはもう、嬉しいのだけれど――。
 至近距離から漂う甘い香りが、ひどく心臓に悪い。

 そしてもうひとつ解せないのが、テーブルの向かい側だ。
 なぜか父さんが、ニコニコしながら座っている。

「……なに。父さん」

 ジト目で見ると、父さんは手元に仕事の専門書らしきものを広げながら言った。

「いやあ、俺も助けられるかもしれないだろ!?」

 本を読むフリをしているが、チラチラとこちらを見て、明らかに自分の出番(活躍の機会)を待っている。

 我が家において、めぐみの好感度は両親ともに異常に高いのだ。

 呆れながらも、気を取り直してめぐみのノートに目をやる。
 何の教科から手をつけるか決めていなかったが、めぐみに合わせて数学をやることにした。

 試験範囲のページをパラパラと見ていけば、大体なんとなく解き方を思い出してサラサラと進められた。

 しかし、めぐみは隣でシャーペンを握ったまま「うーん……」と小さく唸り、手を止めている。

「……どこ?」

 短く声をかけると、めぐみはこちらへ教科書を寄せてきた。

「……ここ。なんでこの公式になるのか、わかんなくて……」

 細くて白い指先が、複雑な数式を指差している。
 その箇所に視線を落とそうとすると、自然とめぐみの柔らかそうな二の腕と、距離が近くなった。

 ふわりと、また良い香りがする。

(集中しろ、俺……)

 あらゆる邪念を頭から振り払い、数字や記号の羅列だけを睨みつけた。

「……たとえば、これはこう分解できて……」

 適当な図を書きながら噛み砕いて説明してやると、めぐみは「あ! そういうことかあ!」と、思った以上にスムーズに理解していった。