◇
その日の夜。
両親は久しぶりに充実した時間を過ごせたようで、帰ってきた母さんの機嫌は、朝のカリカリした様子とは打って変わってすこぶる良かった。
風呂から上がると、リビングのテーブルの上に少し高そうなラングドシャの箱が二つ置いてあった。
「なにこれ」
僕は首にかけたバスタオルで髪の水分を拭き取りながら、その箱を指さした。
「ああ! 食事したホテル限定の有名なお菓子よ。あなたたち兄弟と、めぐちゃんのお家にね」
母さんが今日着ていた服を手入れしながら、上機嫌で答える。
「めぐちゃんに昨日たまたまエントランスで会った時、今日食事に行く話をしたのよ。そしたら『いいなー! 素敵!』ってすごく羨ましがってくれたわ」
その言葉に、僕はふと手を止めた。
「……ん? めぐに、今日出かけること話したの?」
「そうよ。あんたも自分で稼ぐようになったら、めぐちゃんを連れて行ってあげなさいよ!」
そんなお節介も、半分しか耳に入ってこない。
母さんの話によると――めぐみは今日、僕の親が不在であることを知っていて、うちにやってきたということになる。
『なっちゃんママいる? お誕生日だよね』
玄関でめぐみが僕の後ろを覗き込んだときの、やや芝居がかった仕草を思い出す。
(……あいつ、全部知ってて……)
そんな可愛い嘘をついて、わざわざ一人きりの僕の部屋にやってきた彼女がいじらしくて。
「……へー」
僕はそう短く呟きながら、口元から溢れる笑みをどうすることもできなかった。
手元のタオルを強く握りしめ、もう一度、甘ったるい余韻に浸るのだった。
―― 番外編・完 ――
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
夏樹とめぐみの恋模様、少しでもお楽しみいただけていたら、とても嬉しいです。
▼ もうひとつの番外編
『それでもなお、涼しい顔を保とうとする理由』
―― 社会人になった二人のお話。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1789469
他サイトで特典として公開していたものを、こちらでもフォロワーさん限定で公開させていただきました。
よろしければ、あわせてお楽しみくださいませm(_ _)m
―― 他作品一覧 ――
▼ 連載中
『触れられなくても、君がいい。』
―― 遠距離じれキュンロマンス。暑い夏に読んでいただけたら嬉しいです。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1787696
▼ 完結済み
『ねえ、はやく降参してよ。』
―― 同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1786166
『ふたつの弧が、重なるとき』
―― 元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1775690
『面識のなかった同級生と名前のない関係になったら、隙間なく重なる相性で離れられなくなった』
―― シーツの中、言葉より甘い体温に溺れていく絶対的な恋。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1779275
――――――
改めまして……幼馴染二人のラブストーリーにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
またいつでも読みに来ていただけたら嬉しいです。
その日の夜。
両親は久しぶりに充実した時間を過ごせたようで、帰ってきた母さんの機嫌は、朝のカリカリした様子とは打って変わってすこぶる良かった。
風呂から上がると、リビングのテーブルの上に少し高そうなラングドシャの箱が二つ置いてあった。
「なにこれ」
僕は首にかけたバスタオルで髪の水分を拭き取りながら、その箱を指さした。
「ああ! 食事したホテル限定の有名なお菓子よ。あなたたち兄弟と、めぐちゃんのお家にね」
母さんが今日着ていた服を手入れしながら、上機嫌で答える。
「めぐちゃんに昨日たまたまエントランスで会った時、今日食事に行く話をしたのよ。そしたら『いいなー! 素敵!』ってすごく羨ましがってくれたわ」
その言葉に、僕はふと手を止めた。
「……ん? めぐに、今日出かけること話したの?」
「そうよ。あんたも自分で稼ぐようになったら、めぐちゃんを連れて行ってあげなさいよ!」
そんなお節介も、半分しか耳に入ってこない。
母さんの話によると――めぐみは今日、僕の親が不在であることを知っていて、うちにやってきたということになる。
『なっちゃんママいる? お誕生日だよね』
玄関でめぐみが僕の後ろを覗き込んだときの、やや芝居がかった仕草を思い出す。
(……あいつ、全部知ってて……)
そんな可愛い嘘をついて、わざわざ一人きりの僕の部屋にやってきた彼女がいじらしくて。
「……へー」
僕はそう短く呟きながら、口元から溢れる笑みをどうすることもできなかった。
手元のタオルを強く握りしめ、もう一度、甘ったるい余韻に浸るのだった。
―― 番外編・完 ――
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
夏樹とめぐみの恋模様、少しでもお楽しみいただけていたら、とても嬉しいです。
▼ もうひとつの番外編
『それでもなお、涼しい顔を保とうとする理由』
―― 社会人になった二人のお話。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1789469
他サイトで特典として公開していたものを、こちらでもフォロワーさん限定で公開させていただきました。
よろしければ、あわせてお楽しみくださいませm(_ _)m
―― 他作品一覧 ――
▼ 連載中
『触れられなくても、君がいい。』
―― 遠距離じれキュンロマンス。暑い夏に読んでいただけたら嬉しいです。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1787696
▼ 完結済み
『ねえ、はやく降参してよ。』
―― 同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1786166
『ふたつの弧が、重なるとき』
―― 元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1775690
『面識のなかった同級生と名前のない関係になったら、隙間なく重なる相性で離れられなくなった』
―― シーツの中、言葉より甘い体温に溺れていく絶対的な恋。
https://www.no-ichigo.jp/book/n1779275
――――――
改めまして……幼馴染二人のラブストーリーにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
またいつでも読みに来ていただけたら嬉しいです。



