幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】

 ◇

 その日の夜。

 両親は久しぶりに充実した時間を過ごせたようで、帰ってきた母さんの機嫌は、朝のカリカリした様子とは打って変わってすこぶる良かった。

 風呂から上がると、さっき帰ってきた両親が置いたのか、リビングのテーブルの上に少し高そうなラングドシャの箱が二つ置いてあった。

「なにこれ」

 僕は首にかけたバスタオルで髪の水分を適当に拭きながら、その箱を指さした。

「ああ! 食事したホテル限定の有名なお菓子よ。あなたたち兄弟と、めぐちゃんのお家にね」

 母さんが今日着ていた服を手入れしながら、上機嫌で答える。

「めぐちゃんに昨日たまたまエントランスで会った時、今日食事に行く話をしたのよ。そしたら『いいなー! 素敵!』ってすごく羨ましがってくれたわ」

 その言葉に、僕はふと手を止めた。

「……ん? めぐに、今日出かけること話したの?」

「そうよ。あんたも自分で稼ぐようになったら、めぐちゃんを連れて行ってあげなさいよ!」

 母さんのお節介も半分しか耳に入ってこなかった。

 母さんの話によると――めぐみは今日、僕の親が不在であることを知っていて、うちにやってきたということになる。

『なっちゃんママいる? お誕生日だよね』

 そう言って玄関で僕の後ろをのぞき込んだ時の、あの少し不自然な芝居がかった仕草を思い出す。

(……あいつ、全部知ってて……)

 そんな可愛い嘘をついて、わざわざ一人きりの僕の部屋にやってきた彼女がいじらしくて。

「……へー」

 僕はそう短く呟きながら、口元から溢れる笑みをどうすることもできなかった。

 手元のタオルを強く握りしめ、もう一度、甘ったるい幸せな余韻に浸った。





―― 番外編・完 ――





最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

夏樹とめぐみの恋模様、少しでもお楽しみいただけていたら、とても嬉しいです。

そして、もし何か感じられたことがありましたら、一言でも構いませんので、ぜひ教えていただけたらと思います……!
大切に読ませていただきます。

現在公開中の以下の作品も、覗いていただけたら幸いです。

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◆ 毎日更新中(まもなく完結)
『ふたつの弧が、重なるとき』
中学時代、密かに惹かれ合っていたエースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。夢を絶たれた夏の夕暮れを最後に、言葉を交わすこともなかった二人は、上京後、大学の新歓で偶然の再会を果たす。
六年越しの初恋は、不器用な嫉妬やすれ違いを経て、やがて甘く愛おしい恋人同士へ――。眩いその過程を両視点で描いた純愛ロマンス。

◆ 完結 / 他サイトにてトレンドランキングに入りました
『面識のなかった同級生と名前のない関係になったら、隙間なく重なる相性で離れられなくなった』
引き寄せられるように、思いがけず一晩を共にしてしまった同級生・社会人の男女。二人だけの特別な関係をつくっていく過程を、両視点で描いた物語。

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改めまして……幼馴染二人のラブストーリーにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

気が向きましたら、またいつでも読みに来ていただけると嬉しいです。