幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】

 ◇

 ――バタン。

 自分の部屋のドアを閉めると、まるで世界に二人きりになったような錯覚に陥る。

 堰を切ったように強く抱き合い、何度もキスを繰り返した。

 ここは小さい頃、いつも二人で一緒におもちゃや画用紙を広げて遊んでいた部屋だ。
 そして、小学生の僕が、一度目にめぐみへ想いを伝えた部屋でもある。

 いつもなら、僕の熱にめぐみが戸惑いながら応えてくれるような感じなのに、今日は彼女の方からも僕と同じくらい強い熱を感じて、頭がおかしくなりそうだ。

 そのまま吸い込まれるようにして、二人でベッドに傾れ込む。

 彼女のいろんな感触を、自分の手のひらで一つひとつ確かめていく。

 秋服の柔らかなニットの下、薄い肌着のさらに奥にある、なめらかで温かい素肌に指先が触れた瞬間――。
 僕の奥底にわずかに残っていた理性が働き、唇の隙間からそっと問いかけた。

「……怖くない?」

 その言葉を聞き、うっすらと開いためぐみの瞳が、不思議そうに瞬いた。

「……うん? なんで?」

 その言葉が、彼女が僕に安心してすべてを委ねている証拠のように思えて、心の底からホッと息を吐き出す。

「……なら、よかった」

 耳元で甘く囁いて、そのまま、愛しい彼女だけに夢中になっていった。


 ◇

 天井の白い壁をぼんやりと見つめている。

 気を抜くと、頭の中に人生の幸福なエンドロールが流れ出してしまいそうだった。
 そのくらい、今の僕は完全に満たされている。

 隣にいるめぐみは、身体ごと僕の方を向いて、ぴったりと身を寄せている。

 ふと、彼女が鼻歌を口ずさんでいることに気がついた。
 それは僕が一年生のとき文化祭のライブで、めぐみへの片思いの切なさを込めて歌った曲と、同じバンドのもので。
 麗しい恋人へ向けた、ハッピーなラブソングだ。

 僕もまためぐみの方に身体を向け、ニコニコしている彼女の柔らかい猫っ毛に、ゆっくりと指を通す。
 見慣れた水色のシーツに、すっぽりと包まっているその姿が眩しい。

 目を細め、小さな声でサビのフレーズを口ずさむめぐみに、思わずフッと笑みがこぼれる。

『君からの愛のメロディ いつまでも届け続けてね』

 それは彼女なりの僕へのアンサーに聞こえて、胸の奥がギュッと締め付けられるほど愛おしくなった。

「……機嫌いいな」

 優しく笑いかけると、めぐみは僕の胸に顔を擦り寄せて、「えへへ」と幸せそうに微笑んだ。