幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】

 ◇

 リビングに入ると、めぐみはおとなしくダイニングの椅子にちょこんと腰掛けた。

「……麦茶でいい?」

 いつもなら適当に「冷蔵庫にあるもの勝手に飲んで」と言うくせに、変に緊張してしまって律儀に聞いた。

「あ、うん。ありがと」

 取り出した麦茶をグラスに注ぎ、静かにめぐみの前に置く。

「…………」
「…………」

 僕も向かいの席に座り、なんとなく黙ったまま二人で麦茶をすすった。

 テレビからは、もうすぐハロウィンだのという賑やかなニュースが流れているが、まったく頭に入ってこない。

「……今日、肌寒いよね。ニット出しちゃったよ」

 めぐみが少し照れくさそうに、自分の袖を引っ張りながら言う。

「……な」

 その言葉で、僕は今更ながら自分の服装のだらしなさに気づいた。
 上下パジャマとして着ている、ヨレヨレのグレーのスウェットだ。

「やべ。着替えてくるわ」

 そう言って立ち上がる僕を、めぐみが不思議そうに見る。

「え? 別にいいじゃん」
「いや」

 めぐみがせっかく可愛い秋服を着てきてくれたのに、これではあまりにも釣り合わない。
 少しでもマシな格好になりたくて、逃げるように自分の部屋へと駆け込んだ。


 ドアを閉め、「ふーっ」と大きなため息をつく。

 タンスから服を引っ張り出しながら、頭を抱えた。

(……くそ、なんかめちゃくちゃ緊張するな。調子が狂う)

 まず、めぐみの秋服姿が可愛すぎて、目のやり場に困る。
 片思いの時は、適当にあしらって目をそらしておけばセーフだった。
 でも今は違う。僕はめぐみの恋人で、めぐみは僕の恋人なんだ。

(これは……一刻も早く外に出かけた方が、いいかもしれない)

 そう結論付けかけた時、「脳内の僕たち」が騒ぎ出した。

『おい、待て待て! せっかくのチャンスを無駄にする気か!? 弟は終日不在、親は遅い時間まで帰ってこないと言っていた! これはまたとない、数年に一度のスーパーチャンスだぞ!』

『めぐみだって、家に誰もいないとわかっていて上がったんだ! これは暗黙のOKサインに決まってるだろ! 行け!』

『……いや、待て。あのめぐみのことだ。単に何も考えていないだけという可能性が極めて高いぞ……』

 そんないつもの脳内会議を繰り返しながら、無難な黒のロンTと少しゆるめのジーパンに着替えた。


 静かにリビングへと戻る。

(……よし。とりあえず外に誘おう)
 そう決意して口を開こうとした瞬間、先にめぐみが口を開いた。

「……なっちゃん。私、あれやりたい」