今日は、2週間ぶりにバルスが魔物の討伐から戻ってきて、バルスの自宅で一緒に過ごせる日だった。
それだけで、気持ちが浮き立つ。
私は市場で、今日の夕ご飯の食材を選びながら、何度も無意識に笑みがこぼれている。
彼は本当に忙しくて、こうして一緒にいられる時間は多くない。
だから――こういう日は、ちゃんと大事にしたい。
「お、ミドリか」
声をかけられて振り向くと、バルスの団の団長であるダルクさんが立っていた。
「こんにちは、ダルクさん、カミラさん」
隣には、小柄な奥様が柔らかく微笑んでいる。
「あら、ミドリちゃん、こんにちは」
並んでいる姿は不思議なくらい対照的なのに、二人の間に流れる空気はとても穏やかで、自然と心が緩む。
――いいな。
ふと、そんなふうに思う。
「カミラさん、この間はありがとうございました」
「上手くいったかしらと思っていたのよ」
「あ、はい。美味しいって、言ってくれました」
「そう、よかったわ」
そのやり取りのあと、カミラさんがふっと笑った。
「ミドリちゃんは、バルス君のこと、本当に大好きなのね」
一瞬で顔が熱くなる。
「……はい」
小さく答えると、
「ガハハハハ」
とダルクさんが豪快に笑い、
「まあまあ」
とカミラさんが優しくなだめる。
やっぱり、いい夫婦だと思う。
――――――――――
「お帰りなさい」
そう言うと、バルスは短く「あぁ」と返して、いつものように軽く頭を撫でてくれる。
それだけで、胸の奥がほっと緩む。
「問題なかったか?」
「うん。……バルスは、怪我とかしてないですか?」
「大丈夫だ」
苦笑混じりの声に、安心して息を吐く。
「それなら、よかったです」
そう言ってから、迷わずその腕の中に身を寄せた。
この時間だけは、バルスを独り占めできる。
それに、私だけを映す優しい瞳が、本当に心地よくて。
バルスは小さく苦笑しながらも、そのまま私を抱き上げてソファへ腰を下ろした。
逞しい腕の中は、一番落ち着く場所だった。
心臓はうるさいくらいに鳴っているのに、不思議と安心する。
「思ったより仕事が長引いた」
「でも、怪我がなくて良かったです」
バルスの手が頬に触れる。
その手に、自分の手を重ねる。
離したくない。
「明日は休みですか?」
「あぁ。ミドリは?」
「夕方から仕事なので、お昼が休みです」
少しだけためらってから、小さく聞く。
「……明日、お昼に、来てもいい?」
「あぁ。だったら、久々に公園に行くか」
「はい」
自然と笑みがこぼれる。
しばらくそのまま、ぼーっと身を預けた。
ふと、甘え方がひどくなっていくなぁ、と少し呆れる。
でも、やっぱりずっとこうしていたい。
とはいえ、任務から帰ってきたばかりで疲れているのに、いつまでもこのままでいるわけにもいかないよね。
小さく息をついてから、口を開く。
「そろそろ、夕飯、食べますか」
「あぁ、悪いな。作ってもらって。食べていくんだろ?」
「はい」
名残惜しいと思いつつも、ゆっくりと体を離す。
だけど本当は、もっと、もっと、ずっとこの腕の中にいたい。
早く奥さんになりたいって思う。
あと、半年近くもあるんだよね、結婚式まで……。
その時間さえ、今の私には少し長く感じられた。
……なにかあれば、簡単に終わってしまいそうで。
理由なんて、何もないのに。
それだけで、気持ちが浮き立つ。
私は市場で、今日の夕ご飯の食材を選びながら、何度も無意識に笑みがこぼれている。
彼は本当に忙しくて、こうして一緒にいられる時間は多くない。
だから――こういう日は、ちゃんと大事にしたい。
「お、ミドリか」
声をかけられて振り向くと、バルスの団の団長であるダルクさんが立っていた。
「こんにちは、ダルクさん、カミラさん」
隣には、小柄な奥様が柔らかく微笑んでいる。
「あら、ミドリちゃん、こんにちは」
並んでいる姿は不思議なくらい対照的なのに、二人の間に流れる空気はとても穏やかで、自然と心が緩む。
――いいな。
ふと、そんなふうに思う。
「カミラさん、この間はありがとうございました」
「上手くいったかしらと思っていたのよ」
「あ、はい。美味しいって、言ってくれました」
「そう、よかったわ」
そのやり取りのあと、カミラさんがふっと笑った。
「ミドリちゃんは、バルス君のこと、本当に大好きなのね」
一瞬で顔が熱くなる。
「……はい」
小さく答えると、
「ガハハハハ」
とダルクさんが豪快に笑い、
「まあまあ」
とカミラさんが優しくなだめる。
やっぱり、いい夫婦だと思う。
――――――――――
「お帰りなさい」
そう言うと、バルスは短く「あぁ」と返して、いつものように軽く頭を撫でてくれる。
それだけで、胸の奥がほっと緩む。
「問題なかったか?」
「うん。……バルスは、怪我とかしてないですか?」
「大丈夫だ」
苦笑混じりの声に、安心して息を吐く。
「それなら、よかったです」
そう言ってから、迷わずその腕の中に身を寄せた。
この時間だけは、バルスを独り占めできる。
それに、私だけを映す優しい瞳が、本当に心地よくて。
バルスは小さく苦笑しながらも、そのまま私を抱き上げてソファへ腰を下ろした。
逞しい腕の中は、一番落ち着く場所だった。
心臓はうるさいくらいに鳴っているのに、不思議と安心する。
「思ったより仕事が長引いた」
「でも、怪我がなくて良かったです」
バルスの手が頬に触れる。
その手に、自分の手を重ねる。
離したくない。
「明日は休みですか?」
「あぁ。ミドリは?」
「夕方から仕事なので、お昼が休みです」
少しだけためらってから、小さく聞く。
「……明日、お昼に、来てもいい?」
「あぁ。だったら、久々に公園に行くか」
「はい」
自然と笑みがこぼれる。
しばらくそのまま、ぼーっと身を預けた。
ふと、甘え方がひどくなっていくなぁ、と少し呆れる。
でも、やっぱりずっとこうしていたい。
とはいえ、任務から帰ってきたばかりで疲れているのに、いつまでもこのままでいるわけにもいかないよね。
小さく息をついてから、口を開く。
「そろそろ、夕飯、食べますか」
「あぁ、悪いな。作ってもらって。食べていくんだろ?」
「はい」
名残惜しいと思いつつも、ゆっくりと体を離す。
だけど本当は、もっと、もっと、ずっとこの腕の中にいたい。
早く奥さんになりたいって思う。
あと、半年近くもあるんだよね、結婚式まで……。
その時間さえ、今の私には少し長く感じられた。
……なにかあれば、簡単に終わってしまいそうで。
理由なんて、何もないのに。



