浴室から上がって寝室へ入ると、バルスがベッドに腰かけたまま、分厚い本を読んでいた。
私はベッドに上がり、その隣に座る。
――いつもみたいに、腕の中に入りたい。
そう思って、少しだけ視線を向ける。
きっと疲れてるよね。
でも、でも……甘えたい。
一人でそんな葛藤をしていると、すぐに気づいたのか、バルスは本を閉じて脇へ置いた。
「疲れたか?」
そう言いながら、何のためらいもなく私を腕の中へ引き寄せる。
「うん、へへ」
思わず、しまりのない笑みがこぼれた。
そのまま彼の胸に顔を埋める。
大好きな匂いと、少し高い体温に包まれて、体の力が抜けていく。
この国は夏でも、日中は20度後半ほど、夜は10度後半まで下がる。
だから、バルスの腕の中はとてもあたたかくて、それ以上に安心できる。
彼は軽く私の頭を撫でてから、抱きしめたまま、また読書を再開する。
バルスが家にいるときは、大抵こうして腕の中に収まったまま、満足するまで甘えて、そのまま眠ってしまう。
そのせいで、最近は――
彼の腕の中じゃないと、なかなか眠れなくなってしまった。
目を閉じて、ページをめくる音をぼんやり聞く。
今日は朝から忙しかった。
灯火祭の出店準備で、食事亭の手伝いに追われていて、気づけば1日が終わっている。
バルスもまた、警備の打ち合わせで3日ほど城に詰めていた。
お互い忙しくて、まともに顔も見られていなかった。
だから――
少しくらい、甘えてもいいよね。
眠いけど……でも……
私は彼の、本を持っていない右手をそっと取って、自分の頬へ引き寄せた。
――構って、の合図。
その様子に、バルスは視線を落とす。
「眠たそうだな?」
「うん……まぁ……はは」
自分でも分かるくらい、気の抜けた声が出る。
「明日、お祭り楽しみだねぇ」
そう言って顔を上げると、返事の代わりに、軽く唇が触れた。
「明日はミドリも早いんだろう。もう寝た方がいい」
「うん」
へらっとした笑みで頷くと、今度は頬と額に、優しく口づけが落ちる。
そのまま体を横たえようとされて――
「もう少し、もうちょっとだけ……」
思わず首に腕を回して、引き止めた。
だって、3日ぶりだ。
バルスは小さく苦笑する。
「分かった」
布団をかけ直してから、もう一度抱き寄せてくれた。
「もう寝ろ」
その声に、素直に目を閉じる。
大きな手が髪を撫でる感触を感じながら――
私はそのまま、眠りに落ちていった。
――――――――――
相当疲れていたのだろう。
すぐに腕の中で寝息を立て始めたミドリを見つめながら、バルスは小さく息を吐いた。
……我慢しているというのに。
疲れているだろうからと、必要以上に手を出さないようにしているのに――
どうしてこうも無防備に甘えてくるのか。
幸せそうに眠るその顔を、少しだけ恨めしそうに見下ろす。
思考が変な方向へ向きそうになり、軽く首を振る。
そして、そっと額に唇を押し当てた。
起こさないように体を横たえ、腕を抜こうとして――
ミドリの両手が、しっかりと自分の腕を抱え込んで離さない。
引き抜こうと思えばできる。
けれど、それをする理由が見つからなかった。
小さく息を吐いて、力を抜く。
……まったく。
そう心の中でぼやきながら、もう一度だけ彼女の寝顔を見下ろす。
こんなふうに無防備に甘えられて、抗えるわけがない。
腕を取られたまま、目を閉じた。
温もりに包まれながら――
やがて、バルスもまた眠りに落ちていった。
私はベッドに上がり、その隣に座る。
――いつもみたいに、腕の中に入りたい。
そう思って、少しだけ視線を向ける。
きっと疲れてるよね。
でも、でも……甘えたい。
一人でそんな葛藤をしていると、すぐに気づいたのか、バルスは本を閉じて脇へ置いた。
「疲れたか?」
そう言いながら、何のためらいもなく私を腕の中へ引き寄せる。
「うん、へへ」
思わず、しまりのない笑みがこぼれた。
そのまま彼の胸に顔を埋める。
大好きな匂いと、少し高い体温に包まれて、体の力が抜けていく。
この国は夏でも、日中は20度後半ほど、夜は10度後半まで下がる。
だから、バルスの腕の中はとてもあたたかくて、それ以上に安心できる。
彼は軽く私の頭を撫でてから、抱きしめたまま、また読書を再開する。
バルスが家にいるときは、大抵こうして腕の中に収まったまま、満足するまで甘えて、そのまま眠ってしまう。
そのせいで、最近は――
彼の腕の中じゃないと、なかなか眠れなくなってしまった。
目を閉じて、ページをめくる音をぼんやり聞く。
今日は朝から忙しかった。
灯火祭の出店準備で、食事亭の手伝いに追われていて、気づけば1日が終わっている。
バルスもまた、警備の打ち合わせで3日ほど城に詰めていた。
お互い忙しくて、まともに顔も見られていなかった。
だから――
少しくらい、甘えてもいいよね。
眠いけど……でも……
私は彼の、本を持っていない右手をそっと取って、自分の頬へ引き寄せた。
――構って、の合図。
その様子に、バルスは視線を落とす。
「眠たそうだな?」
「うん……まぁ……はは」
自分でも分かるくらい、気の抜けた声が出る。
「明日、お祭り楽しみだねぇ」
そう言って顔を上げると、返事の代わりに、軽く唇が触れた。
「明日はミドリも早いんだろう。もう寝た方がいい」
「うん」
へらっとした笑みで頷くと、今度は頬と額に、優しく口づけが落ちる。
そのまま体を横たえようとされて――
「もう少し、もうちょっとだけ……」
思わず首に腕を回して、引き止めた。
だって、3日ぶりだ。
バルスは小さく苦笑する。
「分かった」
布団をかけ直してから、もう一度抱き寄せてくれた。
「もう寝ろ」
その声に、素直に目を閉じる。
大きな手が髪を撫でる感触を感じながら――
私はそのまま、眠りに落ちていった。
――――――――――
相当疲れていたのだろう。
すぐに腕の中で寝息を立て始めたミドリを見つめながら、バルスは小さく息を吐いた。
……我慢しているというのに。
疲れているだろうからと、必要以上に手を出さないようにしているのに――
どうしてこうも無防備に甘えてくるのか。
幸せそうに眠るその顔を、少しだけ恨めしそうに見下ろす。
思考が変な方向へ向きそうになり、軽く首を振る。
そして、そっと額に唇を押し当てた。
起こさないように体を横たえ、腕を抜こうとして――
ミドリの両手が、しっかりと自分の腕を抱え込んで離さない。
引き抜こうと思えばできる。
けれど、それをする理由が見つからなかった。
小さく息を吐いて、力を抜く。
……まったく。
そう心の中でぼやきながら、もう一度だけ彼女の寝顔を見下ろす。
こんなふうに無防備に甘えられて、抗えるわけがない。
腕を取られたまま、目を閉じた。
温もりに包まれながら――
やがて、バルスもまた眠りに落ちていった。



