窓枠を越えなくても、音は届く。

翌日、さぶはまた首に一枚のメモ用紙をネックレスのようにかけてやって来た。

『私の服はどこですか? ヒント:和楽器サークル顧問の研究室前』

和楽器サークルということは私のサークル。

顧問ということは、日本史の佐々木先生の研究室の前?
 
佐々木先生は日本史担当の教授で和楽器サークル顧問。

五十代の男性の先生だが、ノリが良い先生。私は日本史もとっているので、生徒からも人気があるのを知っている。

私が「佐々木先生の研究室ってどこだったかな〜」と記憶を辿りながら、さぶの首元を撫でていると、さぶは嬉しそうに私の手に顔を(こす)り付けている。

「私は佐々木先生の研究室に行くけど、さぶはそこで待っている? 寒かったらこっそり部室の中に入っている?」

「にゃあ」

「あ、入るってこと?」

良い返事が聞けて私はさぶが部室に入ると思ったら、くるっと体を丸めてその場で座り込んだ。

「入らんのかい!」

相変わらず返事のタイミングが独特なさぶに笑ってしまう。