窓枠を越えなくても、音は届く。

「貴方にこのメモをつけた人って誰? 私のところに来るように言われたの?」
「……」
「また返事なしか……貴方って呼んで良いの? 他の名前あるよね?」
「……」

もう段々この状況の怖さに慣れてきて、私はもう勝手にこの猫の名前を考えることにした。

今の状況は窓を開けていて、窓枠の中に私、窓枠の外に猫がいる。

大学の窓を開けていると冷たい風が入ってくるので、私は校舎の中にいるのにコートもマフラーもしている不思議な状況。

「貴方は寒くないの? 中に入って来ないから窓を閉められなくて暖房も逃げていくのだけれど」
「……」
「貴方って呼び名はやっぱり嫌?」
「……」
「茶色だから『ちゃい』」
「……」
「黒色もあるから『くろ』」
「……」
「ていうか、さぶっ」
「にゃ!」
「え? 今、『さぶっ』に反応した?」
「にゃあ」
「え、貴方の名前『さぶ』なの!?」
「にゃー!」

衝撃的事実なのか、それとも適当に返事をしているだけなのか。

意味が分からないが、一応猫の意思を尊重して「さぶ」と呼ぶのが正しいのだろうか。