窓枠を越えなくても、音は届く。

「私もむかしお琴を習っていたの。だから貴方の部室の前を通るたびに懐かしくて、たまに聴き入っちゃうの」

「ありがとうございます……」

突然褒められて、小さな声でお礼を言うことしか出来ない。

「呼び止めてごめんなさいね。早く部室に戻りなさい」

おばちゃんに(うなが)されるまま、食堂を(あと)にする。

どこかふわふわとした感覚のまま部室に戻ると、さぶが私を出迎えるように「にゃあ」と鳴いてくれる。

その声でやっとハッと我に返るように自分の感情が分かった。

「ねぇ、さぶ。私の琴を聞いてくれる人もいたんだね」

「にゃあ」

「なんか結構嬉しかったかも」