窓枠を越えなくても、音は届く。

そのまま部室にささっと戻ろうとすると、食堂のおばちゃんに呼び止められた。

「その格好のまま帰るの? 今日は寒いから気をつけなさいね」

「なんて優しい人」と心の中で一気におばちゃんに親近感が湧いたのが分かる。

「大丈夫です。部室に戻るだけなので。ありがとうございます」

「部室? サークルに入っているの?」

「私は和楽器サークルで……」

私の言葉におばちゃんが驚いた顔に変わる。

「お琴の子?」

「え?」

「ああ、ごめんなさいね。ここからお手洗いに行く時にたまに和楽器サークルの部室の前を通るのだけれど、綺麗なお琴の音が聞こえることがあって……」

そのおばちゃんの言葉の言い方は嫌悪感でも、ただの事実でもなく……少しだけ嬉しそうだった。