窓枠を越えなくても、音は届く。

「このメモを無視したら、貴方が夕ご飯を食べられなくなるんだよね……」

今の状況ではこの猫は野良猫か飼い猫かすら分からない。

気ままに大学に入って来ているし、野良猫っぽいけれど……。

「お腹空いているよね……」

「にゃ!」

言葉の意味を分かっていないだろうに、こういう時だけ元気にちゃんと返事する猫。

大学内に猫を連れていくわけにはいかないので、私はその猫に「ちょっと待っててね」と言って食堂に向かった。
 
お昼の時間を大幅に過ぎた今、食堂には誰もいない上に電気もついていない。

ついでに暖房もついていないので、普通に「さぶっ」と声が出てしまうくらいには冷えている。

食堂の真ん中の机の下、猫の食事は置かれていた。

わざわざお皿に一回分だけ乗せて。

「絶対に誰かが用意しているってことだよね……こわ」

なんだこの不思議な状況、と心が悲鳴をあげそうになる。

しかし、今この状況の怖さを共有出来る人間はいない。

誰かに言いたくても言う人がいない。