窓枠を越えなくても、音は届く。

「寒いに反応したから、さぶ……くっ」

佐々木先生が声を殺しながら笑っている。

「別に堂々と笑っても大丈夫ですよ」

「いや、桜木が真面目につけた名前を笑ったりはしないよ」

「絶対に今の方が私に失礼ですよ!」

私はツッコミを入れても佐々木先生は笑っていたが、しばらくして顔を上げた。

「まぁでも、その猫がうちの部室に来てくれた良かったな」

「……?? なんでですか?」

「だって琴の音だけでも良いが、たまに部室に猫の鳴き声が響くのも悪くないだろ? 桜木も子供じゃないし変な対応をするとは思っていないが、何かあったらまた相談しなさい。先生も協力するよ」

「佐々木先生……! 最近大学で『佐々木先生の授業面白いよね』って地味に噂されている佐々木先生! なんて良い先生なんですか!」

「ちょっと待て。嬉しい話だが、地味にってなんだ」

「いやー、私と友達が二人で話していただけなので……」

「おい!」とツッコミを入れようとしている佐々木先生を見ながら、私は「じゃあ、私は部室に戻りますね」と言って歩き出す。

そんな私を佐々木先生が「ちょっと待て」と呼び止めた。