窓枠を越えなくても、音は届く。

冷たい空気が(ただよ)っている廊下を歩きながら、私はもう一度思考を巡らせる。
 
一体誰がさぶの首にメモ用紙をかけてこんな出来事を起こしているのかはサッパリ分からないままだけど……

「さぶと出会えたことは感謝しないとね」

私の膝の上で丸まっていたさぶの姿を思い浮かべれば、自然に笑みが溢れてしまう。

そんな温かい気持ちのまま、また冷たい風が吹いている廊下を歩いて行き、佐々木先生の研究室に向かう。

ドアをノックすれば、すぐに佐々木先生が扉を開けた。

「お、桜木。戻ってきたか」

「佐々木先生、さっきは急いでいてすみませんでした……!」

「それは別に良いが、結局何があったんだ?」

私は部室に猫が訪れたこと、その猫を「さぶ」と呼んでいること、猫がメモ用紙をつけていたこと、そのメモ用紙の指示が佐々木先生の研究室前だったことを伝えた。