窓枠を越えなくても、音は届く。

そんな思考をまとめる暇もなく、佐々木先生の研究室に着いてしまう。

ほぼ走って来たので、すぐに着くのは当たり前だけれど。

佐々木先生の研究室の前には毛糸で出来た猫用の服と帽子が置かれている。

白黒の服と帽子はセットになっていて、さぶに似合いそうである。

研究室の中には人がいるから、誰かが外に出たらこの服に気づいて「なんだこれ?」ってなるはず。

なっていないということは、つい先ほど置かれたものなのだろうか。

「ていうか、早く戻らないと! 窓が開いたままじゃん」

私が部室に向かって(きびす)を返そうとした瞬間、研究室の扉が開いた。

「お、桜木(さくらぎ)じゃないか。研究室まで来て何かあったのか?」

「いや、何でもないです」

「え、ここまで来たのにか?」

「佐々木先生、いま部室の窓が開きっぱなしなんです! 暖房がついているのに! それにさぶも寒がってますよ!」

「桜木、お前……急に頭でもおかしくなったか?」

「状況は後で説明します! 5分後にまた来ます!」