【不定期更新】甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。

その花屋は、商店街の一番端にある。

店前には季節の花を並べ、中は落ち着いた雰囲気ながら、豊富な品揃えが自慢の私の宝物が詰まった場所。

澪花(れいか)さん、この花はここに置けば良いですか?」

「あー、その花はそこに……って、なんで場所分かっているの……!?」

「品種とスペースの空き具合的にここかな、と思って」

「そうだけど!」

あの日、雇った人は……空雅(くうが)くんはそれはもう仕事の出来る人だった。

「空雅くん、じゃあ次は今日の納品先の確認をもう一度……」

「それなら先ほど終わらせましたよ」

「そ、そっか……」

「ていうか、澪花さん。俺のことは『空雅』と呼び捨てで良いですよ?」

「いや、いくら私が上司でもそれは……」

「俺は何も気にしないですし、澪花さんの方が年上じゃないですか。それにこの店は澪花さんと俺しかいないので、誰も注意する人はいないですよ」

「でも……。仕事なんだし、むしろ本当はお互い苗字の方がもっと落ち着くというか……」

「それは嫌です」

空雅くんは接客の雰囲気を見ていても礼儀が分からない人ではない。

むしろ礼儀正しいタイプだ。

にもかかわらず、空雅くんは私の呼び方だけは折れてくれなかった。

そして、私に呼び捨て出来ないならせめて「下の名前とくん付け」と呼んでほしいと言った。

まぁ、それなら……と妥協したことをよく覚えている。

何故それほど呼び方にこだわるのか、苗字より名前の方が気に入っている場合もあるかもしれないし、深く詮索するのはやめようと思って今日まで来ている。