【不定期更新】甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。

「ほら、送ってくれるんでしょ?」

「そうですけど! なんか、ちょっと想像と違う展開になって……」

空雅くんはどこか不服そうなのに、私が嬉しそうに笑っているのを見て、結局なぜか最後には釣られて笑ってしまっていた。

居酒屋から花屋までの距離は短くて……歩く時間は僅か十五分ほど。そんなものはすぐに過ぎてしまうもので。

気づけば見慣れた看板が見え、心にほっとするような安心感が戻ってくる。

「送ってくれてありがとう、空雅くん」

空雅くんにお礼を言って、私は店の中に入るために扉の鍵を開ける。

その間も空雅くんは駅に向かわなくて、私が家に入ったのを確認してから駅に向かうようだった。

しかし、空雅くんがその前にスマホを取り出して、誰かと電話し始めたように見えた。

それでも、多分気のせいだろうと思い込んでいた。

扉を閉める間際にチラッと見えただけだから、見間違いだろうと思っていた。

私は、空雅くんが本当はどんな立場の人かなんか考えたこともなかったから。


『秘書ならこんな時間に電話かけて来ないで欲しいな』

『一応、食事が終わったであろう時間帯まで待っていたのですけどね』

『お前からの電話がなかったら、もうちょっと余韻に浸れたよ』

『貴方様ほどの立場の人なら、早々に身分を明かした方が良いんじゃないですか? そのほうが澪花様も……』

『澪花さんはそんなこと気にしないよ。俺が格好悪い所見せた時の方が何故かルンルンだったし』


そんな空雅くんの電話の声なんて聞こえるはずがなかったから。





『あー、早く頬も……頬以外も、澪花さんのこと触れる立場になりたい』





甘い溺愛が始まっていることを、まだ私は知らない。