ネムリ姫の快眠計画

部屋の前の廊下。
侍女たちが集まっている。
侍女①
「見た?」
侍女②
「見た見た!」
侍女③
「姫様人形!」
侍女④
「めちゃくちゃ可愛い!」
侍女⑤
「動くんだよね?」
侍女②
「歩くし喋る!」
侍女③
「本物の姫様そっくり!」
侍女⑤
「見たい!!」
するとそこへ――
重そうな足音。
コツ…コツ…
侍女たち
「……」
廊下の向こうから現れたのは
大臣 グラハム
白いひげをたくわえた年配の男。
グラハム
「何の騒ぎだ?」
侍女たち
「!」
侍女①
「だ、大臣様!」
グラハム
「城の廊下で騒ぐとは何事だ」
侍女②
「そ、それが…」
侍女③
「姫様人形が…」
グラハム
「姫様人形?」
侍女④
「姫様そっくりの動く人形なんです!」
グラハム
「……」
グラハム
「そんなものがあるのか?」
侍女たち
「あります!!」
侍女⑤
「すごいんです!」
グラハム
「……」
グラハムは少し考える。
そして言った。
グラハム
「見せなさい」
侍女たち
「はい!」
侍女たちは勢いよくネムリの部屋の扉を開けた。
部屋の中
ネムリはベッドで枕を抱えている。
ネムリ
「すぅ……」
ミリアは人形として立っている。
ミリア
「……」
レオンは壁の近くに立っている。
レオン
「……」
侍女たちが入ってくる。
侍女②
「姫様!」
ネムリ
「……」
ネムリがゆっくり目を開ける。
ネムリ
「なに」
侍女③
「大臣様が姫様人形を見たいそうです!」
ネムリ
「……」
ネムリはミリアを見る。
ミリア
「……」
ミリア(心の声)
(やめてください)
グラハムが入ってきた。
グラハム
「姫様、おはようございます」
ネムリ
「おはよう」
グラハム
「侍女たちが言う“姫様人形”とは…」
グラハムの視線がミリアに向く。
ミリア
「……」
ミリア(心の声)
(終わった)
グラハム
「……」
グラハムは近づく。
じっと観察する。
グラハム
「確かに姫様に似ている」
ネムリ
「うん」
グラハム
「しかし人形とは思えぬ」
レオン
「……」
レオンは目をそらす。
グラハム
「本当に動くのですか?」
侍女たち
「動きます!!」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「?!」
ネムリ
「歩く」
ミリア
「……」
ミリアはぎこちなく歩く。
カク…
カク…
グラハム
「おお!」
侍女たち
「すごいですよね!」
グラハム
「見事だ…」
ネムリ
「喋る」
ミリア
「!?」
グラハム
「喋るのですか!?」
侍女たち
「はい!」
ミリア
「……」
ミリアはゆっくり顔を上げる。
ミリア
「おはよう…ございます…」
グラハム
「!!」
グラハム
「すごい!!」
グラハムは完全に感動している。
グラハム
「これは素晴らしい!」
グラハム
「技術の結晶だ!」
レオン(小声)
「違います」
グラハム
「この人形を作った職人は誰だ?」
ネムリ
「秘密」
グラハム
「なるほど…」
グラハムは腕を組む。
そして真剣な顔で言った。
グラハム
「姫様」
ネムリ
「なに」
グラハム
「この人形」
ネムリ
「うん」
グラハム
「外交に使えます」
ミリア
「え」
レオン
「は?」
侍女たち
「え?」
グラハム
「もし姫様が忙しい時」
グラハム
「この人形を代わりに置けば」
グラハム
「会議にも出られる」
レオン
「それは無理です」
ネムリ
「いい」
レオン
「よくありません」
ミリア
「絶対無理です!!」
グラハム
「実に素晴らしい発明だ!」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「はい…」
ネムリ
「出世」
ミリア
「したくありません!!」
侍女たち
「姫様人形すごい!!」
グラハム
「王国の宝だ!」
レオン
「違います!!」
ネムリは枕を抱きしめながら言った。
ネムリ
「じゃ」
レオン
「何ですか」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「はい」
ネムリ
「会議出て」
ミリア
「無理です!!」
レオンはついに頭を抱えた。
レオン
「……」
レオン
「この城、本当に終わります」
ネムリ
「大丈夫」
レオン
「何がです」
ネムリ
「眠い」
レオン
「関係ありません」
ミリア
「助けてください!!」
侍女たち
「姫様人形かわいい!!」
グラハム
「外交の未来だ!」
部屋の中は完全に大混乱だった。