城の廊下。
レオンとネムリは静かに歩いていた。
ネムリは大事そうに枕を抱えている。
ネムリ
「早く」
レオン
「走らないでください」
ネムリ
「眠い」
レオン
「まだ部屋に着いていません」
ネムリ
「あと何歩」
レオン
「三十歩くらいです」
ネムリ
「長い」
レオン
「普通です」
やっと寝室の扉の前に着いた。
レオンは小声で言う。
レオン
「静かに入りましょう」
ネムリ
「うん」
レオンがゆっくり扉を開ける。
ギィ…
部屋の中。
ベッドの上に――
ミリアが寝ている。
ネムリ
「……」
レオン
「……」
ミリア
「すぅ……すぅ……」
ネムリ
「ちゃんと寝てる」
レオン
「仕事はしていますね」
二人は安心した。
しかしその時。
コンコン
扉がノックされた。
侍女の声
「姫様、失礼いたします」
ネムリ
「!」
レオン
「!」
ネムリ
「やばい」
レオン
「隠れてください!」
ネムリは慌ててカーテンの裏に隠れる。
レオンは扉を少しだけ開けた。
侍女
「レオン様?」
レオン
「どうしました」
侍女
「王妃様が姫様のご様子を見に来られます」
レオン
「……」
レオン
「今ですか?」
侍女
「はい」
レオン
「……」
レオンの顔が青くなる。
レオン
「わかりました」
侍女
「すぐ来られます」
侍女は去っていった。
扉が閉まる。
レオン
「姫様」
ネムリ(小声)
「なに」
レオン
「王妃様が来ます」
ネムリ
「……」
ネムリ
「ミリア」
レオン
「はい」
ネムリ
「起きてない」
レオン
「完全に熟睡です」
ミリア
「すぅ……」
ネムリ
「快眠してる」
レオン
「今それ重要ですか!?」
ネムリ
「どうする」
レオン
「起こしてください」
ネムリはミリアの所へ行く。
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「すぅ」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「……」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「すぅ……」
レオン
「全く起きません!」
ネムリ
「深い」
レオン
「快眠すぎます!」
ネムリ
「枕のせい?」
レオン
「違います!」
その時。
廊下から足音。
コツ…コツ…
レオン
「来ました!!」
ネムリ
「……」
ネムリは一瞬考える。
そして。
ネムリ
「ミリア」
ネムリはミリアの肩を揺する。
ネムリ
「給料」
ミリア
「はい!!」
ミリアが飛び起きた。
レオン
「起きた!!」
ネムリ
「王妃」
ミリア
「え!?」
コンコン
王妃の声
「ネムリ、起きているの?」
ミリア
「!!」
ミリアは慌てて布団をかぶる。
ネムリはカーテンの裏へ戻る。
レオンは扉へ。
レオン
「どうぞ」
扉が開く。
王妃エレノアが入ってきた。
エレノア
「こんな時間に失礼するわね」
レオン
「いえ」
エレノアはベッドを見る。
ミリアは布団の中。
エレノア
「ネムリ?」
ミリア
「……はい」
声が少し震える。
エレノア
「もう寝るの?」
ミリア
「……はい」
エレノア
「まだ夜は早いわよ」
ミリア
「……今日は眠くて」
ネムリ(カーテン裏で小声)
「うまい」
レオン
「静かに」
エレノアは少し笑う。
エレノア
「相変わらずね」
エレノア
「ちゃんと仕事は終わらせたの?」
ミリア
「はい!」
ミリア
「全部終わりました!」
エレノア
「本当に?」
ミリア
「は、はい!」
レオン
「……」
レオンは心の中で思う。
(それは本当です)
エレノアは満足そうに頷いた。
エレノア
「ならいいわ」
エレノア
「おやすみ」
ミリア
「おやすみなさい」
エレノアは部屋を出た。
扉が閉まる。
沈黙。
ミリア
「……」
ミリア
「はぁぁぁぁ!!」
ミリアは飛び起きた。
ミリア
「寿命縮みました!!」
ネムリがカーテンから出てくる。
ネムリ
「おかえり」
ミリア
「姫様!!」
ミリア
「どこ行ってたんですか!!」
ネムリ
「枕」
ネムリは枕を見せる。
ミリア
「……」
ミリア
「枕のために私が王妃様と会話を!?」
ネムリ
「ありがとう」
ミリア
「軽い!!」
レオン
「本当に軽いです」
ネムリはベッドへ向かう。
ネムリ
「じゃ」
ネムリ
「寝る」
ミリア
「え!?」
レオン
「もうですか!?」
ネムリ
「うん」
ネムリは新しい枕を置く。
そして横になる。
ふわっ。
ネムリ
「……」
ネムリ
「最高」
数秒後。
ネムリ
「すぅ……」
レオン
「……」
ミリア
「……」
ミリア
「寝た」
レオン
「寝ましたね」
ミリア
「姫様自由すぎません?」
レオン
「今更です」
ミリアはベッドの横に座る。
ミリア
「でも」
レオン
「?」
ミリア
「枕ちょっと気になる」
レオン
「やめてください」
ミリア
「ちょっとだけ」
ミリアは枕を触る。
ミリア
「……」
ミリア
「これやばいです」
レオン
「そんなにですか?」
ミリア
「快眠します」
レオン
「寝ないでください」
ミリア
「無理です」
レオン
「え?」
ミリア
「眠い」
レオン
「ちょっと!」
ミリア
「すぅ……」
レオン
「寝た!!」
部屋には
ネムリとミリアの
二人の寝息。
レオンは天井を見上げた。
レオン
「……」
レオン
「この城大丈夫でしょうか」
朝。
カーテンの隙間から光が差し込む。
部屋の中では――
ネムリ
「すぅ……」
ミリア
「すぅ……」
二人ともぐっすり。
ベッドの上ではネムリ姫。
そして隣のソファではミリアが王女のドレスのまま寝ている。
コンコン
侍女
「姫様、朝でございます」
返事はない。
侍女
「失礼いたします」
扉が開く。
侍女が入ってきた。
侍女
「姫様、朝の――」
侍女は言葉を止めた。
視線の先。
ベッドにネムリ。
ソファにネムリ。
侍女
「……」
侍女
「……」
侍女
「……え?」
侍女
「姫様が……」
侍女
「二人?!」
侍女は叫んだ。
侍女
「きゃあああああ!!」
その声でネムリがゆっくり目を開ける。
ネムリ
「……うるさい」
侍女
「ひ、姫様!!」
ネムリ
「なに」
侍女
「姫様が二人います!!」
ネムリはのそのそ起き上がる。
そしてソファを見る。
ミリア
「……」
ミリアは固まっている。
ネムリと目が合った。
ミリア(小声)
「どうしましょう!?」
ネムリは少し考える。
数秒。
ネムリ
「人形」
侍女
「……え?」
ネムリ
「新しい人形」
侍女
「……」
侍女
「人形?」
ネムリ
「うん」
ネムリはソファのミリアを指差す。
ネムリ
「等身大」
侍女
「……」
侍女は近づいてミリアを見る。
ミリアは必死に動かない。
侍女
「……」
侍女
「すごく精巧ですね」
ネムリ
「高い」
侍女
「触っても?」
ミリアの目が少し揺れた。
ネムリ
「ダメ」
侍女
「なぜですか?」
ネムリ
「壊れる」
侍女
「なるほど!」
侍女は感心した。
侍女
「最近の人形はすごいですね!」
ネムリ
「うん」
ミリア(心の声)
(信じた!!)
侍女
「王妃様にもお見せしたいです」
ネムリ
「今いない」
侍女
「そうでした」
王妃は視察で城外。
侍女
「では朝食の準備をいたします」
ネムリ
「うん」
侍女
「姫様、人形も素敵ですがお着替えを」
ネムリ
「あとで」
侍女
「かしこまりました」
侍女は満足そうに部屋を出ていった。
扉が閉まる。
沈黙。
ミリア
「はぁぁぁぁぁ!!」
ミリアが崩れ落ちた。
ミリア
「死ぬかと思いました!!」
ネムリ
「うまくいった」
ミリア
「全然うまくいってません!!」
ネムリ
「人形」
ミリア
「人形じゃありません!!」
その時。
廊下から声。
侍女②
「さっき聞いた?姫様の部屋に人形があるって!」
侍女③
「見たい!」
ミリア
「え?」
ネムリ
「……」
ミリア
「来ますよ?!」
ネムリ
「人形だから」
ミリア
「無理です!!」
コンコン
侍女②
「姫様?人形見てもいいですか?」
ネムリ
「……」
ネムリはミリアを見る。
ネムリ
「人形」
ミリア
「……」
ミリアはゆっくり立ち上がる。
カク…カク…
人形のように歩く。
ネムリ
「うまい」
ミリア
「全然うまくありません!!」
扉が開く。
侍女たちが入ってくる。
侍女②
「わぁ!」
侍女③
「すごい!」
ミリアはぎこちなく歩く。
カク…
カク…
侍女③
「歩いた!!」
侍女②
「動く人形!?」
ネムリ
「高級」
侍女たち
「すごーーーい!!」
ミリア(心の声)
(地獄です!!)
ネムリはベッドの上でぼーっと見ている。
ネムリ
「ミリア」
ミリア(小声)
「なんですか」
ネムリ
「上手」
ミリア
「嬉しくありません!」
その時。
廊下から足音。
コツ…コツ…
聞き覚えのある声。
レオン
「姫様、朝の――」
扉が開く。
レオン
「……」
部屋の中。
侍女たち。
ネムリ。
そして
人形のフリして歩くミリア。
沈黙。
レオン
「……」
レオン
「何をしているんですか」
ミリア
「……」
ネムリ
「新しい人形」
レオン
「……」
レオンはゆっくり天井を見上げた。
レオン
「もう驚きません」
侍女②
「レオン様!すごいんです!この人形動くんです!」
レオン
「知っています」
ミリア
「知らないでください!!」
侍女たち
「え?」
ミリア
「……」
ミリアは再び人形のポーズを取った。
レオン
「……」
レオン
「この城は本当に大丈夫でしょうか」
ネムリ
「大丈夫」
レオン
「なぜです」
ネムリ
「よく寝た」
レオン
「関係ありません」
部屋の中。
侍女たちがミリア(人形役)を囲んでいる。
ミリアはぎこちなく立っている。
カク…
カク…
侍女②
「すごい…」
侍女③
「本当に動く…」
侍女④
「こんな人形見たことない…!」
ミリア(心の声)
(帰りたい…)
その時。
侍女③がミリアの顔を覗き込んだ。
侍女③
「姫様とそっくりですね…」
侍女②
「本物みたい」
侍女④
「喋ったりするのかな?」
ミリア
「!!」
ミリアの目が見開く。
ネムリはベッドの上でぼーっとしていた。
そして――
ネムリ
「喋る」
侍女たち
「え?!」
ネムリ
「それ」
ネムリはミリアを指さす。
ネムリ
「喋るのもする」
ミリア
「?!」
侍女たち
「えぇぇぇぇ!?」
侍女③
「動くだけじゃなくて!?」
侍女②
「喋れるんですか?!」
ネムリ
「うん」
侍女たちの目がキラキラする。
侍女④
「すごい!!」
侍女②
「見たいです!!」
侍女③
「喋るところ!」
ミリア(小声)
「姫様!!」
ネムリ(小声)
「人形」
ミリア
「無理です!!」
侍女②
「人形さん喋って!」
侍女③
「お願い!」
ミリア
「……」
ミリアは震えている。
ネムリはぼーっと見ている。
ミリア
「……」
ミリアは覚悟を決めた。
カク…
カク…
人形っぽく首を動かす。
ミリア
「……おはよう…ございます…」
侍女たち
「きゃぁぁぁぁ!!」
侍女②
「喋った!!」
侍女③
「すごい!!」
侍女④
「可愛い!!」
ミリア(心の声)
(終わった…)
侍女②
「姫様人形すごいです!!」
侍女③
「欲しい!!」
侍女④
「城で売ったら絶対人気です!!」
ネムリ
「売る?」
侍女たち
「欲しいです!!」
ミリア
「売らないでください!!」
侍女たち
「え?」
ミリア
「……」
ミリアはまた人形ポーズ。
レオンが額を押さえる。
レオン
「……」
レオン
「なぜ喋らせたんですか」
ネムリ
「盛り上がる」
レオン
「盛り上げないでください」
その時。
侍女③
「名前はあるんですか?」
ネムリ
「……」
ネムリは少し考える。
そして言った。
ネムリ
「姫様人形」
侍女たち
「かわいい!!」
ミリア
「かわいくありません!!」
侍女②
「姫様人形もう一回喋って!」
侍女③
「歩いて!」
侍女④
「お辞儀もできる?」
ミリア
「……」
ミリアはゆっくりお辞儀。
侍女たち
「きゃぁぁ!!」
侍女②
「可愛い!!」
侍女③
「欲しい!!」
侍女④
「流行ります!!」
レオン
「流行らせないでください」
しかし――
数時間後。
城の廊下。
侍女①
「見た?姫様人形」
侍女②
「めちゃくちゃ可愛い!」
侍女③
「喋るんだよ!」
侍女④
「歩くの!」
侍女⑤
「見たい!!」
その頃。
ネムリの部屋。
ミリアは人形として立たされていた。
ミリア
「……」
侍女たち
「姫様人形かわいい!」
侍女
「もう一回歩いて!」
ミリア
「……」
カク…
カク…
ミリアは人形のフリで歩く。
侍女たち
「きゃーー!!」
ネムリはベッドで枕を抱えている。
ネムリ
「人気」
レオン
「人気にしないでください」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「はい」
ネムリ
「すごい」
ミリア
「全然嬉しくありません!!」
侍女③
「姫様!この人形すごく可愛いです!」
ネムリ
「うん」
侍女②
「毎日見たい!」
ネムリ
「いいよ」
ミリア
「よくありません!!」
レオンは天井を見上げた。
レオン
「……」
レオン
「この城の未来が本気で心配です」
ネムリ
「大丈夫」
レオン
「なぜです」
ネムリ
「ミリア頑張ってる」
ミリア
「姫様も頑張ってください!!」
侍女たち
「姫様人形かわいい!!」
ミリア(心の声)
(助けてください…)
ネムリは枕に顔を埋める。
ネムリ
「快眠」
レオン
「万能言みたいに言わないで下さい、w」
レオンとネムリは静かに歩いていた。
ネムリは大事そうに枕を抱えている。
ネムリ
「早く」
レオン
「走らないでください」
ネムリ
「眠い」
レオン
「まだ部屋に着いていません」
ネムリ
「あと何歩」
レオン
「三十歩くらいです」
ネムリ
「長い」
レオン
「普通です」
やっと寝室の扉の前に着いた。
レオンは小声で言う。
レオン
「静かに入りましょう」
ネムリ
「うん」
レオンがゆっくり扉を開ける。
ギィ…
部屋の中。
ベッドの上に――
ミリアが寝ている。
ネムリ
「……」
レオン
「……」
ミリア
「すぅ……すぅ……」
ネムリ
「ちゃんと寝てる」
レオン
「仕事はしていますね」
二人は安心した。
しかしその時。
コンコン
扉がノックされた。
侍女の声
「姫様、失礼いたします」
ネムリ
「!」
レオン
「!」
ネムリ
「やばい」
レオン
「隠れてください!」
ネムリは慌ててカーテンの裏に隠れる。
レオンは扉を少しだけ開けた。
侍女
「レオン様?」
レオン
「どうしました」
侍女
「王妃様が姫様のご様子を見に来られます」
レオン
「……」
レオン
「今ですか?」
侍女
「はい」
レオン
「……」
レオンの顔が青くなる。
レオン
「わかりました」
侍女
「すぐ来られます」
侍女は去っていった。
扉が閉まる。
レオン
「姫様」
ネムリ(小声)
「なに」
レオン
「王妃様が来ます」
ネムリ
「……」
ネムリ
「ミリア」
レオン
「はい」
ネムリ
「起きてない」
レオン
「完全に熟睡です」
ミリア
「すぅ……」
ネムリ
「快眠してる」
レオン
「今それ重要ですか!?」
ネムリ
「どうする」
レオン
「起こしてください」
ネムリはミリアの所へ行く。
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「すぅ」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「……」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「すぅ……」
レオン
「全く起きません!」
ネムリ
「深い」
レオン
「快眠すぎます!」
ネムリ
「枕のせい?」
レオン
「違います!」
その時。
廊下から足音。
コツ…コツ…
レオン
「来ました!!」
ネムリ
「……」
ネムリは一瞬考える。
そして。
ネムリ
「ミリア」
ネムリはミリアの肩を揺する。
ネムリ
「給料」
ミリア
「はい!!」
ミリアが飛び起きた。
レオン
「起きた!!」
ネムリ
「王妃」
ミリア
「え!?」
コンコン
王妃の声
「ネムリ、起きているの?」
ミリア
「!!」
ミリアは慌てて布団をかぶる。
ネムリはカーテンの裏へ戻る。
レオンは扉へ。
レオン
「どうぞ」
扉が開く。
王妃エレノアが入ってきた。
エレノア
「こんな時間に失礼するわね」
レオン
「いえ」
エレノアはベッドを見る。
ミリアは布団の中。
エレノア
「ネムリ?」
ミリア
「……はい」
声が少し震える。
エレノア
「もう寝るの?」
ミリア
「……はい」
エレノア
「まだ夜は早いわよ」
ミリア
「……今日は眠くて」
ネムリ(カーテン裏で小声)
「うまい」
レオン
「静かに」
エレノアは少し笑う。
エレノア
「相変わらずね」
エレノア
「ちゃんと仕事は終わらせたの?」
ミリア
「はい!」
ミリア
「全部終わりました!」
エレノア
「本当に?」
ミリア
「は、はい!」
レオン
「……」
レオンは心の中で思う。
(それは本当です)
エレノアは満足そうに頷いた。
エレノア
「ならいいわ」
エレノア
「おやすみ」
ミリア
「おやすみなさい」
エレノアは部屋を出た。
扉が閉まる。
沈黙。
ミリア
「……」
ミリア
「はぁぁぁぁ!!」
ミリアは飛び起きた。
ミリア
「寿命縮みました!!」
ネムリがカーテンから出てくる。
ネムリ
「おかえり」
ミリア
「姫様!!」
ミリア
「どこ行ってたんですか!!」
ネムリ
「枕」
ネムリは枕を見せる。
ミリア
「……」
ミリア
「枕のために私が王妃様と会話を!?」
ネムリ
「ありがとう」
ミリア
「軽い!!」
レオン
「本当に軽いです」
ネムリはベッドへ向かう。
ネムリ
「じゃ」
ネムリ
「寝る」
ミリア
「え!?」
レオン
「もうですか!?」
ネムリ
「うん」
ネムリは新しい枕を置く。
そして横になる。
ふわっ。
ネムリ
「……」
ネムリ
「最高」
数秒後。
ネムリ
「すぅ……」
レオン
「……」
ミリア
「……」
ミリア
「寝た」
レオン
「寝ましたね」
ミリア
「姫様自由すぎません?」
レオン
「今更です」
ミリアはベッドの横に座る。
ミリア
「でも」
レオン
「?」
ミリア
「枕ちょっと気になる」
レオン
「やめてください」
ミリア
「ちょっとだけ」
ミリアは枕を触る。
ミリア
「……」
ミリア
「これやばいです」
レオン
「そんなにですか?」
ミリア
「快眠します」
レオン
「寝ないでください」
ミリア
「無理です」
レオン
「え?」
ミリア
「眠い」
レオン
「ちょっと!」
ミリア
「すぅ……」
レオン
「寝た!!」
部屋には
ネムリとミリアの
二人の寝息。
レオンは天井を見上げた。
レオン
「……」
レオン
「この城大丈夫でしょうか」
朝。
カーテンの隙間から光が差し込む。
部屋の中では――
ネムリ
「すぅ……」
ミリア
「すぅ……」
二人ともぐっすり。
ベッドの上ではネムリ姫。
そして隣のソファではミリアが王女のドレスのまま寝ている。
コンコン
侍女
「姫様、朝でございます」
返事はない。
侍女
「失礼いたします」
扉が開く。
侍女が入ってきた。
侍女
「姫様、朝の――」
侍女は言葉を止めた。
視線の先。
ベッドにネムリ。
ソファにネムリ。
侍女
「……」
侍女
「……」
侍女
「……え?」
侍女
「姫様が……」
侍女
「二人?!」
侍女は叫んだ。
侍女
「きゃあああああ!!」
その声でネムリがゆっくり目を開ける。
ネムリ
「……うるさい」
侍女
「ひ、姫様!!」
ネムリ
「なに」
侍女
「姫様が二人います!!」
ネムリはのそのそ起き上がる。
そしてソファを見る。
ミリア
「……」
ミリアは固まっている。
ネムリと目が合った。
ミリア(小声)
「どうしましょう!?」
ネムリは少し考える。
数秒。
ネムリ
「人形」
侍女
「……え?」
ネムリ
「新しい人形」
侍女
「……」
侍女
「人形?」
ネムリ
「うん」
ネムリはソファのミリアを指差す。
ネムリ
「等身大」
侍女
「……」
侍女は近づいてミリアを見る。
ミリアは必死に動かない。
侍女
「……」
侍女
「すごく精巧ですね」
ネムリ
「高い」
侍女
「触っても?」
ミリアの目が少し揺れた。
ネムリ
「ダメ」
侍女
「なぜですか?」
ネムリ
「壊れる」
侍女
「なるほど!」
侍女は感心した。
侍女
「最近の人形はすごいですね!」
ネムリ
「うん」
ミリア(心の声)
(信じた!!)
侍女
「王妃様にもお見せしたいです」
ネムリ
「今いない」
侍女
「そうでした」
王妃は視察で城外。
侍女
「では朝食の準備をいたします」
ネムリ
「うん」
侍女
「姫様、人形も素敵ですがお着替えを」
ネムリ
「あとで」
侍女
「かしこまりました」
侍女は満足そうに部屋を出ていった。
扉が閉まる。
沈黙。
ミリア
「はぁぁぁぁぁ!!」
ミリアが崩れ落ちた。
ミリア
「死ぬかと思いました!!」
ネムリ
「うまくいった」
ミリア
「全然うまくいってません!!」
ネムリ
「人形」
ミリア
「人形じゃありません!!」
その時。
廊下から声。
侍女②
「さっき聞いた?姫様の部屋に人形があるって!」
侍女③
「見たい!」
ミリア
「え?」
ネムリ
「……」
ミリア
「来ますよ?!」
ネムリ
「人形だから」
ミリア
「無理です!!」
コンコン
侍女②
「姫様?人形見てもいいですか?」
ネムリ
「……」
ネムリはミリアを見る。
ネムリ
「人形」
ミリア
「……」
ミリアはゆっくり立ち上がる。
カク…カク…
人形のように歩く。
ネムリ
「うまい」
ミリア
「全然うまくありません!!」
扉が開く。
侍女たちが入ってくる。
侍女②
「わぁ!」
侍女③
「すごい!」
ミリアはぎこちなく歩く。
カク…
カク…
侍女③
「歩いた!!」
侍女②
「動く人形!?」
ネムリ
「高級」
侍女たち
「すごーーーい!!」
ミリア(心の声)
(地獄です!!)
ネムリはベッドの上でぼーっと見ている。
ネムリ
「ミリア」
ミリア(小声)
「なんですか」
ネムリ
「上手」
ミリア
「嬉しくありません!」
その時。
廊下から足音。
コツ…コツ…
聞き覚えのある声。
レオン
「姫様、朝の――」
扉が開く。
レオン
「……」
部屋の中。
侍女たち。
ネムリ。
そして
人形のフリして歩くミリア。
沈黙。
レオン
「……」
レオン
「何をしているんですか」
ミリア
「……」
ネムリ
「新しい人形」
レオン
「……」
レオンはゆっくり天井を見上げた。
レオン
「もう驚きません」
侍女②
「レオン様!すごいんです!この人形動くんです!」
レオン
「知っています」
ミリア
「知らないでください!!」
侍女たち
「え?」
ミリア
「……」
ミリアは再び人形のポーズを取った。
レオン
「……」
レオン
「この城は本当に大丈夫でしょうか」
ネムリ
「大丈夫」
レオン
「なぜです」
ネムリ
「よく寝た」
レオン
「関係ありません」
部屋の中。
侍女たちがミリア(人形役)を囲んでいる。
ミリアはぎこちなく立っている。
カク…
カク…
侍女②
「すごい…」
侍女③
「本当に動く…」
侍女④
「こんな人形見たことない…!」
ミリア(心の声)
(帰りたい…)
その時。
侍女③がミリアの顔を覗き込んだ。
侍女③
「姫様とそっくりですね…」
侍女②
「本物みたい」
侍女④
「喋ったりするのかな?」
ミリア
「!!」
ミリアの目が見開く。
ネムリはベッドの上でぼーっとしていた。
そして――
ネムリ
「喋る」
侍女たち
「え?!」
ネムリ
「それ」
ネムリはミリアを指さす。
ネムリ
「喋るのもする」
ミリア
「?!」
侍女たち
「えぇぇぇぇ!?」
侍女③
「動くだけじゃなくて!?」
侍女②
「喋れるんですか?!」
ネムリ
「うん」
侍女たちの目がキラキラする。
侍女④
「すごい!!」
侍女②
「見たいです!!」
侍女③
「喋るところ!」
ミリア(小声)
「姫様!!」
ネムリ(小声)
「人形」
ミリア
「無理です!!」
侍女②
「人形さん喋って!」
侍女③
「お願い!」
ミリア
「……」
ミリアは震えている。
ネムリはぼーっと見ている。
ミリア
「……」
ミリアは覚悟を決めた。
カク…
カク…
人形っぽく首を動かす。
ミリア
「……おはよう…ございます…」
侍女たち
「きゃぁぁぁぁ!!」
侍女②
「喋った!!」
侍女③
「すごい!!」
侍女④
「可愛い!!」
ミリア(心の声)
(終わった…)
侍女②
「姫様人形すごいです!!」
侍女③
「欲しい!!」
侍女④
「城で売ったら絶対人気です!!」
ネムリ
「売る?」
侍女たち
「欲しいです!!」
ミリア
「売らないでください!!」
侍女たち
「え?」
ミリア
「……」
ミリアはまた人形ポーズ。
レオンが額を押さえる。
レオン
「……」
レオン
「なぜ喋らせたんですか」
ネムリ
「盛り上がる」
レオン
「盛り上げないでください」
その時。
侍女③
「名前はあるんですか?」
ネムリ
「……」
ネムリは少し考える。
そして言った。
ネムリ
「姫様人形」
侍女たち
「かわいい!!」
ミリア
「かわいくありません!!」
侍女②
「姫様人形もう一回喋って!」
侍女③
「歩いて!」
侍女④
「お辞儀もできる?」
ミリア
「……」
ミリアはゆっくりお辞儀。
侍女たち
「きゃぁぁ!!」
侍女②
「可愛い!!」
侍女③
「欲しい!!」
侍女④
「流行ります!!」
レオン
「流行らせないでください」
しかし――
数時間後。
城の廊下。
侍女①
「見た?姫様人形」
侍女②
「めちゃくちゃ可愛い!」
侍女③
「喋るんだよ!」
侍女④
「歩くの!」
侍女⑤
「見たい!!」
その頃。
ネムリの部屋。
ミリアは人形として立たされていた。
ミリア
「……」
侍女たち
「姫様人形かわいい!」
侍女
「もう一回歩いて!」
ミリア
「……」
カク…
カク…
ミリアは人形のフリで歩く。
侍女たち
「きゃーー!!」
ネムリはベッドで枕を抱えている。
ネムリ
「人気」
レオン
「人気にしないでください」
ネムリ
「ミリア」
ミリア
「はい」
ネムリ
「すごい」
ミリア
「全然嬉しくありません!!」
侍女③
「姫様!この人形すごく可愛いです!」
ネムリ
「うん」
侍女②
「毎日見たい!」
ネムリ
「いいよ」
ミリア
「よくありません!!」
レオンは天井を見上げた。
レオン
「……」
レオン
「この城の未来が本気で心配です」
ネムリ
「大丈夫」
レオン
「なぜです」
ネムリ
「ミリア頑張ってる」
ミリア
「姫様も頑張ってください!!」
侍女たち
「姫様人形かわいい!!」
ミリア(心の声)
(助けてください…)
ネムリは枕に顔を埋める。
ネムリ
「快眠」
レオン
「万能言みたいに言わないで下さい、w」
