迷子放送

 ――ピーンポーンパーンポーン。
 本日も■■店にお越しいただきまして誠にありがとうございます。
 ご来店中のお客さまに、迷子のご案内をいたします。
 白のパーカーに、デニムパンツ姿の、12歳くらいの女の子です。
 1階の事務室で、お母さまがお待ちです。
 至急、1階の事務室にお越しください。

 アナウンスを聞いたユカは、驚きのあまり読んでいた本を落としそうになった。
 アナウンスされた迷子の服装が、自分とまったく一緒だったからだ。
「……信じられない。お母さんのバカ!」
 ユカは今日、お母さんと一緒にショッピングモールへ来ていた。
 ユカは小学六年生。ひとりで買い物だってできる。
 新発売の雑誌をゆっくり立ち読みしたかったし、それぞれ別行動をすることにしたのだ。
「あたし、2階の本屋さんにいるって言ったじゃん!」
 アナウンスのせいで、ユカは顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
 このショッピングモールには同級生だってよく来ている。
 もし今のアナウンスを同級生に聞かれてたら……。
 ユカはできるだけ隠れるようにして、急いで1階の事務室に向かう。
 ひと気の少ない階段を降りる途中で、異常に腕の長い影が見えた。
 そこで、ユカの意識は途絶えた。

 ピーンポーンパーンポーン……
 本日も■■店にお越しいただき、誠にありがとうございます。
 ご来店中のお客さまに迷子のお知らせです。
 ●●町からお越しの、楠本ユカさま。
 お心当たりのあるお客さまは、2階サービスカウンターへお越しください。
 もしくは、お近くの従業員までお知らせくださいませ。
 
 ピーンポーンパーンポーン……
 楠本ユカさま。楠本ユカさま。お母さまがお探しです。
 
 アナウンスが何度も続く。
 しかし、ユカはもうショッピングモールにはいない。
 お母さんと会うことも、二度となかった。